「デミセクシュアル（デミセクシャル）」とは何ですか？ 定義は？

他者に対して性的に惹かれないのは「アセクシュアル（アセクシャル）」と呼ぶのはすでに説明したね。

ここからはアセクシュアルのいろいろなバリエーションの話をしていくよ。

ひとくちにアセクシュアルと言っても「他者に全く性的に惹かれない」という極端な人もいる。これは狭義のアセクシュアルだね。そして、そうじゃない人もいるんだ。今回説明するのは「デミセクシュアル（デミセクシャル）」だよ。

英語では「demisexual」と書く。「デミ（demi）」というのは「部分的」という意味だね。

まあそういうことだと言えるのかも。簡単な一般的定義を言うと「強い感情的な絆ができた相手に対してのみ性的に惹かれる」ということだ。

ちょっとややこしいよね。少しずつ説明していこう。まずデミセクシュアルの人が、“ある魅力”を感じる人に出会ったとする。

その魅力は恋愛的魅力かもしれないし、外見に惹かれるとか、プラトニックに惹かれるとか、その他の魅力かもしれない。でも性的に惹かれているわけではない。

それだけならね。でもデミセクシュアルの人はその魅力を感じる人と関係性を構築して信頼を築き、強い感情的な絆のようなものが生まれたと感じた時、その時になって初めてその相手に性的に惹かれるようになるんだ。

つまり最初は相手に性的に魅力を感じていない。だけど強い感情的な結びつきができたと実感できれば、その相手に性的な魅力を感じたり、性的関係を持ちたいという願望が芽生えるんだよ。性的に魅力を感じていない状態ではなくなる。

まあその言い方でもいいのかな。とにかくデミセクシュアルも広義のアセクシュアルのひとつだ。

それ、デミセクシュアルの人が一番よく言われる誤解なんだよ。

そういう指摘をする人のイメージはこうだよね。誰しも最初は恋をした相手とお付き合いをしてデートとかでじっくり親交を深めつつ、互いに納得して信頼し合ったら、性的関係を持つのがセオリーだよね…っていう、そういうやつ。

でもデミセクシュアルはそれとは全く違うよ。デミセクシュアルの人は最初に恋をした相手と性的関係を持つのを保留にしているわけじゃない。性的関係を持つのに躊躇しているわけでもないし、奥手や慎重派ということでもないし、脈ありサインがわかりづらいことでもない。

どんな相手でも最初は性的な魅力で惹かれないんだ。だから初期の頃に「性的魅力を私に感じている？」と聞かれれば「感じていません」と答えるだろうね。

そうだよ。相手に性的魅力とは異なる魅力を感じていることはある。それが何かは人それぞれだけどね。全く知らない相手やそれほど深くは知らない相手でも…。

そして強い感情的な絆ができて信頼関係を構築できたときに性的な魅力を感じて惹かれる。でもそれは即座に「セックスする」という行為と直結するというわけではない。また、性的魅力がどの程度の強さかは人による。

うん。性的に惹かれるようになった後にどうするかはデミセクシュアルの人の個人しだいだよ。だから性行為するまでに長い付き合い時間を要する人という解釈もちょっと違うよね。

デミセクシュアルの説明をしたときに「みんなそうじゃない？」と言ってくるのは日本でもよくありがちだ。おそらくいきなり性的関係を求めるのはお行儀が悪い…みたいな価値観も背景にあるのだろう。日本はそういう「性」に対する押さえつけがただでさえ露骨な社会だったりするし…。でもデミセクシュアルの人は世間体とか、相手の反応を気にしてそう振舞っているわけじゃない。

だから「付き合ってるんだから遠慮なくセックスしちゃいなよ」などと他人に言われるのはうんざりに思っている人も多いよ。

そして最初は性的魅力を感じていない雰囲気でも、後に性的関係を持つようになったからと言って「アセクシュアルじゃなかったのか！」と責めるような態度もダメだ。

そうだね、そうやって分けて考えるよ。

あと大事なのはデミセクシュアルは他の性的指向とセットで用いることもできるよ。

例えば、強い感情的な絆ができた相手に対してのみ性的に惹かれるのがデミセクシュアルだと説明したけど、その性的に惹かれる相手のジェンダーは何か。同性か異性か両性か、そういう見方もできるよね。

そうだね。別に無理して同性か異性か両性かを考える必要はない。デミセクシュアルとだけ自認していても問題ない。でもデミセクシュアルに加えて同性愛や両性愛を表明していても変じゃないよ。

感じる性的魅力が弱いとかあまりない場合は、「グレーセクシュアル（グレーセクシャル）」という言葉もあるから参考にしてね。