- Qキュピオセクシュアル(キュピオセクシャル / Cupiosexual)とは何ですか?
- A
他者に性的魅力は感じないものの、他者と性的関係を持つことを望んでいるという性的指向のことです。
性的魅力は感じないけど、性的関係を持つ?
「アセクシュアル(アセクシャル)」は他者に性的に惹かれない…つまり、性的魅力を経験せず、性的関係を持つことを強く望まない…と説明したよね。
うん。それがアセクシュアルの一般的な定義なんだよね。
これはあくまで狭義のアセクシュアルの定義であって、広義のアセクシュアル、要するにアセクシュアルのスペクトラムの中にはもっと多様なバリエーションがある…ということも大事な理解しておくべきことだね。
「グレーセクシュアル」や「デミセクシュアル」のようなマイクロラベルというやつだね。
他にもいろいろあって、その中には実は「性的関係を持つ」アセクシュアルのマイクロラベルもあるんだよね。
それはアセクシュアルの一般的なイメージを覆しそうだね…。
今回はそのマイクロラベルを紹介しよう。それが「キュピオセクシュアル(キュピオセクシャル)」だ。英語では「Cupiosexual」と書くよ。
キュピオ…ね。これはどういう性的指向なの?
他者に性的魅力はほとんどもしくは全く感じないけど、その人と性的関係を持つことは望む…という性的指向だね。
性的魅力は感じないけど、性的関係は持ちたいんだね。なるほど。
もちろん実際に性的関係を持てるかどうかは別にして、自分としては性的関係を持ってもいい、性的関係を持つことも選択肢にある…そういう本人の立場でもあるよね。
このキュピオセクシュアルという用語はいつ頃から登場したの?
2014年にネット上で「Kalossexual」という用語が生まれて、それがいつの日からかは不明だけど「Cupiosexual」に変わったよ。2015年にはキュピオセクシュアルのフラッグも作られているし、すっかり定着しているね。
アセクシュアルの傘下として仲間入りだね。
ちなみに「キュピオ(cupio)」というのはラテン語で「望む」という意味だそうだよ。
なんか「キューピッド」に似てないですか? 翼があって恋の矢を撃つ…。
そう、語源は同じだよ。それを理解しておくと覚えやすいかもね。
性的関係を持つ理由
もう少し具体的にキュピオセクシュアルについて知りたいのですけど、性的魅力は感じていないんですよね?
そこは一般的に連想するアセクシュアルと同じだね。
でも性的関係は持とうとする…これはどういう背景があるのかな?
もちろんそれは個人で違ってくる。例えば、相手に性的魅力は感じていないけど、肉体的な快楽を得たり、性行為自体でストレスが発散できるから、性的関係は持つことまでは拒絶しない…そういうケースもある。
あくまで性的関係をそういうふうに捉えているんだね。
他者と性的関係は望まないけどポルノなどは楽しむ「エーゴセクシュアル」というマイクロラベルがあるんだけど、その方向性に近いかもしれないね。性的魅力とは切り離してあくまで性的関係を即物的に位置づけるみたいに。
なるほどね。
他にもパートナーを喜ばせるために性的関係を持つということもあるし、子どもが欲しいからそのためなら性的関係を一時的に持ってもいいという場合もありうるね。
これは相手との合意のうえで相手の希望を考慮して…ってことだね。
うん。アセクシュアルの人でもパートナーを持つ人はいるからね。そのパートナーが同じアセクシュアルであるならともかく、そうではないとき、どうやって互いの満足な関係を維持するか。ときには相手の要望を尊重してもいいというアセクシュアルな人もいるだろうね。
子どもを持つことも?
子どもを持つには養子とか他にもいろいろな選択肢が今の世の中にはあるけど、自分とパートナーとの血縁の間に子を宿したいと考えるなら、性的関係を持つことも考える人もいる。
キュピオセクシュアルの人は性的魅力を感じないけど、いろいろな理由で性的関係を持つことを選ぶこともある…そういうことですね。
まあ、それでもやっぱり性的関係を基本軸にしているわけではないし、一般的な規範とは異なるから、アセクシュアルのマイクロラベルということになっているんだよ。
性的関係を持つからといって
キュピオセクシュアルの人は他のアセクシュアルのマイクロラベルと重なることはありますか?
あるよ。例えば、キュピオセクシュアルでグレーセクシュアルとか、キュピオセクシュアルでデミセクシュアルとか、キュピオセクシュアルでフレイセクシュアルとか…。いくらでも考えられるね。
最初は完全に誰とも性的関係を持とうと思わなかったけど、後で自分はキュピオセクシュアルかも…と揺れ動く…そういうことはある?
あるんじゃないかな? そもそもこのキュピオセクシュアルは人間関係にも左右されることもあるしね。
性的関係の話をしたけど、これが恋愛を軸にした話で、恋愛的魅力に基づく感情はないけど、デートなど恋愛的な関係を楽しみたい場合は「キュピオロマンティック」と呼ぶの?
そうだね。
キュピオセクシュアルか…。またアセクシュアルの世界が広がった感じですね。
もしかしたら自分はアセクシュアルだから、一切、性的関係を持ってはいけないんじゃないかと考えてしまっている当事者もいたかもしれない。
ちょっと完璧主義的に思い詰めてしまうこともあるよね。
でも性的魅力を感じなくても性的関係を持つ人もいる。キュピオセクシュアルというラベルはそういう人のための肯定感になるといいよね。
アセクシュアルなんだから性的関係は持たないはずでしょ!…って責め立てるのもダメだね。そういう決めつけも良くない。
どうしても「アセクシュアル(無性愛)=性的関係を持たない人」と連想してしまいがちなんだよね。だからアセクシュアルの人は、浮気とかスキャンダラスな性的関係が起こりえないから安全だと扱われることもあったり…。
アセクシュアルを性的関係を持たない人だと思い込むとなかなか厄介ですね。
そういう先入観は世の中を見渡すとかなり強いんだけどね。とくにアセクシュアルという言葉を知ったばかりの人は…。アセクシュアルのスペクトラムの中にはいろいろあるということをぜひわかってほしいね。
アセクシュアルの人の中には性的関係を持たない人も多いけど、そうじゃない人もいるんだと覚えておこう。
次のオススメな疑問解決
編集部コメント
ここで説明しているのはキュピオセクシュアルの一般的な定義です。当事者個人で実際の細部は異なるので、その人の意見を尊重しましょう(失礼に問い詰めないように)。アセクシュアルだからといって性的関係を持たないとは限らないということはよく認識しておく必要があります。