- Qアロマンティックとは何ですか?
- A
他者に恋愛的に惹かれないという恋愛的指向のことです。他者に性的に惹かれない「アセクシュアル」とは全く異なる用語です。
性的魅力と恋愛的魅力は別!

他者に性的に惹かれないのは「アセクシュアル(アセクシャル)」と呼ぶんですよね。それは以前に学びました。

ということはアセクシュアルの人は恋愛もしないんですか?

いや、そうとは限らないよ。

どういうこと?

別として考える場合があるんだ。つまり、性的に惹かれることと恋愛的に惹かれることは別物ということだね。

そういうものなんですか?

特定の人に性的に惹かれても恋愛感情があるとは限らないし、恋愛感情を抱いたとしても性的な魅力までは感じているわけではないこともある。その2つを安易に同一視はできない…と考える人もいるよ。

確かにそこは人それぞれ違ってきますよね。

恋愛関係を構築すればおのずと性的関係も構築できると思っている人もいる。恋愛はセックスまでの最初のステップだと考えているとかね。

そういう人は多そうなイメージですね。口に出さなくても暗黙の了解…みたいな。

でもそれは全員がそうだということではないよ。

うんうん。

一方で、別に恋愛には興味がなく性的関係だけを求めたいという人だっている。それは悪いことではない。もちろん互いの同意は必要だけどね。

そして恋愛的にも性的にも他者に惹かれない人もいる?

そういうことだね。

なんとなくいろいろだってことはわかってきました。

他者に惹かれる、つまり「魅力」には「性的魅力」と「恋愛的魅力」があると整理すればいい。これは混同することはできない。

こういうふうに性的魅力と恋愛的魅力に分けて考える発想は昔から実はあったのだけど、最近は「スプリット・アトラクション・モデル」と呼ばれているよ。

スプリット・アトラクション・モデル? なんか急に数学とか科学みたいな難解さを感じる…。

まあ、別にこの用語は無理に覚えなくてもいいけどね。大事なのは…

性的魅力と恋愛的魅力を混同しない!…でしょ?

もうわかってるね。

それを混同しているとこっちはそのつもりがなくても相手と上手く合わず、関係性を悪くさせることもあるかもしれないですね。

そうだよ。だからパートナー関係を構築したいならその相手とはその部分をしっかり話し合わないといけないよね。友達と恋愛トークするときだって、そこは大事だ。

でも「私は性的魅力と恋愛的魅力を両方感じているよ。あなたは?」とか普通聞かないようにも思うし…。

そこまで単純に問いただすことはなかなかできないけど、それぞれのペースでゆっくり確認し合うんでいいんじゃないかな。恋愛は当然するよね!という勝手な決めつけなどはしないようにね。
性的指向があるなら恋愛的指向もある

これまでの話でわかったと思うけど、性的魅力と恋愛的魅力は別ということは、「性的指向」があるなら「恋愛的指向」というものもあるということだ。

性的指向というのは、「どんな相手に性的に魅力を感じるのか」だよね?

そう。じゃあ恋愛的指向は?

どんな相手に恋愛的に魅力を感じるのか?…ってこと?

そのとおりだ。異性に恋愛的に惹かれる人、同性に恋愛的に惹かれる人、異性にも同性にも恋愛的に惹かれる人…いろいろだね。

でもそういう場合はなんで表現すればいいんですか? だってこれまで「異性愛」とか「同性愛」とか呼んだときは性的なのか恋愛的なのか区別してなかったと思うし…。

確かに日本語ではそこをひとめで区別できる表現がないんだよね。みんな「愛」でひとまとめになっているから。

便利な言葉だなぁ、「愛」って…。

英語ではスプリット・アトラクション・モデルに基づけば、異性に性的に惹かれるのは「ヘテロセクシュアル」、異性に恋愛的に惹かれるのは「ヘテロロマンティック」と呼び分けられるよ。

じゃあ同性愛なら性的な方を「ホモセクシュアル」、恋愛的な方を「ホモロマンティック」、両性愛なら性的な方を「バイセクシュアル」、恋愛的な方を「バイロマンティック」と分けるということだね。

理解が早いね。

となるとヘテロセクシュアルの人は全員がヘテロロマンティックだということでもないのかな?

お察しのとおり。「ヘテロセクシュアルだけどホモロマンティック」みたいに性的指向と恋愛的指向が食い違う人はいるよ。こういうふうに性的指向と恋愛的指向が一致しないことは「クロス・オリエンテーション」と呼ばれたりするよ。

そうなるとすごい組み合わせが増えるよね。何パターンあるんだろう?

一気に膨大に増えるね。でもそれが実際の現実なんだよ。人間って性的指向と恋愛的指向だけを考えてみても複雑な個性を持っているものなんだ。
アロマンティックという恋愛的指向

そこでやっと本題なんだけど、誰にも性的に惹かれないのがアセクシュアルなのだとしたら、誰にも恋愛的に惹かれないのは…

「アロマンティック」だね。もうさすがにわかるよ。

ご名答。アロマンティックは英語では「aromantic」。この「a」の意味はアセクシュアルを説明するときにもしたよね。こっちも英語の正しい発音で表記するなら「エイロマンティック」だね。

じゃあこっちも同じだ。「aromantic」の日本語表記は「アロマンティック」「エイロマンティック」「Aロマンティック」とあるんだね。

うん。「sexual」の日本語表記に揺らぎがあるアセクシュアルよりは混乱はしないけどね。アロマンティックの場合は「アロマ」とか「Aロマ」とか省略する表現もよく日本では使われるよ。

アセクシュアルの英語圏のコミュニティでは仲間同士で呼び合う愛称として「Ace」があると聞いたけど、アロマンティックの人々には何かあるのですか?

「Aro」だね。そのまま最初の文字を取ってきただけだからわかりやすいね。

おさらいになるけど、アセクシュアルは性的に惹かれないことを意味しているのであって、恋愛的に惹かれないわけではないんだね。

そうだ。日本だとアセクシュアルを「性的にも恋愛的に惹かれない」という意味だとする論調が初期の頃に拡散してしまってまだこれに関して混乱が多いのだけど。詳細は「ノンセクシュアル」の説明を参考にしてね。

そうすると他者に対して性的にも恋愛的に惹かれない人はなんて言えばいいの?

「アセクシュアル・アロマンティック」だね。両方とも併記すればいいよ。

つまり「アセクシュアル」だけの人と、「アロマンティック」だけの人と、「アセクシュアル・アロマンティック」の人がいるということかぁ…。

実際はここももっと複雑だよ。アロマンティックにもアセクシュアルと同様に大きなアイデンティティ用語の中に構成される小さな範囲のアイデンティティ用語がある。例えば「グレーロマンティック」や「デミロマンティック」とか。

ますます範囲が広がってきた感じ。

だからこういう広義のアセクシュアルと広義のアロマンティックを含めて「Aスペクトラム」と呼んで大きくひとまとめに語ることがあるよ。Aスペクトラムは英語では「A spectrum」と表記するので縮めて「A-spec」と書くんだ。

アロマンティックの意味はわかったかな?

だいたいね。でもまだわからないことはあるよ。性的魅力と恋愛的魅力が別物なら、キスやハグはどっちに該当する行為なのだろうとか…。

そのへんもあとで別のかたちで疑問解決をしていこう。ここで覚えていてほしいのは、誰にも恋愛をしないという人もいるということ。それは変なことではないということだ。

アロマンティックという恋愛的指向ですね。

あと性的指向と恋愛的指向、性的魅力と恋愛的魅力…これらを分けるという前提で話を進めたけど、絶対にそうしなさいと強要しているわけではないからね。これをどう捉えるかは個人で違ってくる。その個々の立場を尊重するのを忘れずにね。
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編集部コメント
性的指向のアセクシュアルと恋愛的指向のアロマンティックは別のものを意味する概念だということだけはよく理解をしておいてください。