- Qアセクシュアル・アロマンティックは草食系と同じですか? 違いがあるのですか?
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「アセクシュアル(アセクシャル)」「アロマンティック」という用語は性的指向や恋愛的指向を意味するものであり、「草食系」という日本のメディアで使われる造語とは異なります。
「草食系」とは?

「草食系」って言葉を聞いたことある?

ああ、あの「草食系男子」とか「草食男子」みたいに使う言葉でしょ?

どういう意味だと理解してる?

う~んと、恋愛をガツガツと求めないみたいな感じかな。あと、心優しくて親切で男らしさにそんなにこだわらない…みたいなイメージもあるよね。

うん、そうだね。この「草食系」という言葉は、2006年にコラムニストだった「深澤真紀」という人が考え出したものだよ。

そんなに前だったんだね。

この当時の「草食系」「草食男子」が意味していたのは、「女性をもののように扱うのではなく、リスペクトし、対等な関係を結べる下の世代の男性たちに向けた褒め言葉」のつもりだったそうだよ。

ふ~ん、そうなんだ。

新語・流行語大賞のトップ10にリストされたり、当時はこの「草食系」「草食男子」という言葉がメディアの間で大流行りしたんだ。それで今も残っているんだね。

社会に定着したわけだね。

ところがそうは喜べないことも起こったんだ。

え、なに?

ところがこの言葉は「若者批判」のターゲットにされてしまい、いつの間にかダメな若者の象徴のようになってしまったという歴史もあるんだよ。

別にダメってことはないと思うけど…。

それにメディアでどんどんと好き勝手に広まってしまったことで、「草食系」や「草食男子」が意味する範囲も散らかってしまったりも…。

流行り言葉ってそういう結末をたどるよね…。

だから「草食系」とか「草食男子」と言われても、嬉しくない人もいるし、侮辱で使う人もいるし、ちょっと複雑な言葉になっているね。
アセクシュアル・アロマンティックも草食系?

あれ、ということは「草食系」って「アセクシュアル」や「アロマンティック」ということなの? なんか似てない?

うん、それはよく言われがちなことのひとつだね。確かに、他者に性的に惹かれないアセクシュアル、他者に恋愛的に惹かれないアロマンティック…そういう人たちの中にも巷で「草食系」って言われたりする人はいると思うよ。

そうなんだ、じゃあ同じってこと?

いや、同じではない。そこがとても大事なところだね。

どうして同じじゃないの?

もともとこの「草食系」という言葉は、考案者は「特定のライフスタイルの若い男性を褒める言葉」として想定していて、基本は「批判されがちな若者を褒めよう」という意図がある。

うん、当初はそうだったみたいだね。今は若者を批判する使われ方にもなっていたりするみたいだけどね。

そう、しだいに言葉の意味が拡大しまくって、今ではメディアがざっくりと好き勝手に使ってる。なので意味するところがものすごく流動的なんだけど…。

そういう現状だね。

対する「アセクシュアル」や「アロマンティック」というのは、これも幅広いスペクトラムのある用語だけど、基本は性的指向・恋愛的指向を意味する。だから「褒める」とか「批判する」とか、そういう「人を評価するため」の用語ではない。

アセクシュアルは「他者に性的に惹かれない」…ただそれだけだもんね。

うん、「アセクシュアルなんだ、じゃあ良い人だね」とは言わないし、そう言うのはなんか変だよね。

アセクシュアルの男性の中にも嫌な奴はいるし、攻撃的な人とか、女性を差別する人とか、いるだろうしね。

そうだね。「アセクシュアル」や「アロマンティック」というのは性格やライフスタイルを意味するものではないので、「草食系」という用語とはかなり立ち位置が違うんだよ。
当事者の味方になる言葉

じゃあ、「草食系」って言葉を安易に「アセクシュアル」や「アロマンティック」の人に使うべきではないね。

まあ、自分の性的指向や恋愛的指向を正確に理解してくれていないと思われるかもしれないね。

「草食系」という言葉は要注意だね。

ただ「アセクシュアル」や「アロマンティック」という用語を絶対に重要視しているわけでもない。別に自分を表す言葉は本人が好きに決めてもいい。当事者本人が「草食系」という言葉が好きならそれでもいいんだよ。

本人を尊重しないとね。

結局、アセクシュアル・アロマンティックの人たちは、自分の味方になってくれる言葉のもとに集まるんだと思うよ。「アセクシュアル」「アロマンティック」という言葉が多くの当事者の間で利用されるのも、そうルールで決まっているわけではなく、その言葉の周りにいれば居心地が他よりはいいからという、それだけのことだろうし…。

「草食系」という言葉の周りに集まってもそんなに居心地は良くない?

そこは人によるだろうけど、居心地の良さって「言葉」のインパクトだけで決まるものじゃないから。

どういうこと?

「アセクシュアル」「アロマンティック」という言葉が当事者の味方になるように、実際はさまざまな努力が行われているんだよ。活動家の人たちや当事者団体がサポートしたり、言葉が誤解や偏見でかき回されないように守ったりね。

そういう地道な努力が「当事者の味方になる言葉」を作るんだね。

「草食系」という言葉もそういう努力がもっとあったら、今とは違った道に進んでいたかもしれないね。

当事者の味方になる言葉、もっと増えたらいいな。
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編集部コメント
「アセクシュアル」や「アロマンティック」という言葉と、「草食系」という用語を混同しないように注意しましょう。「アセクシュアル」や「アロマンティック」という言葉をメディアなどで使う際は、それらが当事者の味方としての言葉になっている歴史を尊重し、毀損しないように気を付けなければいけません。
類似質問ワード
「アセクシャルは草食系?」「Aセクシャルは草食系?」
参考文献
●若者たたきに使われた「草食男子」生みの親・深澤真紀さんの反省 – 毎日新聞