アセクシュアル・アロマンティックの人は世界や日本に何人いるのですか？ 人口のうち割合は何%ですか？

うん、それはよくある質問だね。

どうやって調べると思う？

そうだね。でもいきなり手当たりしだいに聞くのも問題だから、適切な調査方法に則って行わないとダメだね。

そう、場合によっては個人の性的指向などの情報を同意なく暴露する「アウティング」になりかねないから、慎重に調査する必要はあるね。

うん。アセクシュアルの人の数を推定する調査は、研究者や調査会社などを中心に世界で散発的に行われているよ。

もちろん調査の事例はあまり豊富ではないんだけどね。アセクシュアルやアロマンティックへの関心はまだまだ低いから。

う～ん、それが残念ながらそう簡単に「何人です」って断言できるわけでもないんだよ…。

じゃあ、いくつかの調査結果を説明していこう。

アメリカのウィリアムズ研究所というところが2019年に発表した調査によれば、アメリカの総人口の約「0.08%」がアセクシュアルであるとの結果がでているよ。

イギリスの国家統計局によるイングランドとウェールズの2021年の国勢調査データによれば、アセクシュアルと答えたのは「0.06％」だったよ。

電通が2020年に行った「LGBTQ+調査2020」では、日本の全国20～59歳の計60000人のうち、「0.81%」の人が自分をアセクシュアル・アロマンティックと自認していたことが報告されてい

市場調査会社イプソス（Ipsos）が2022年に発表したレポートによると、イギリスのアセクシュアルの人口はZ世代では「2%」であるとの結果になっている。それより上の年代だと「1%」くらいとのことだよ。

2023年に発表された東京大学の研究員によるオンラインでの「日本人の性的行動に関する全国調査」結果では、アセクシュアルだと答えた人は女性は「10％」、男性は「6.9％」で、とくに20代の場合は女性は「14.7％」、男性は「11.1%」だったとしている。

他にも調査事例はあるけど、ざっくり紹介するとこんな感じかな…。

そうなんだよ。そこが問題だから「何人です」って簡単には断言できないんだよ。

理由はいくつか考えられる。まずそのひとつが、アセクシュアルやアロマンティックという言葉の意味が正しく認識されていない可能性だね。

さっき紹介した電通が2020年に行った「LGBTQ+調査2020」では「アセクシュアル・アロマンティック」という言葉の意味を知っていると答えた人は5.7％しかいなかったという結果もでている。つまり94％という大半の人はそもそも言葉の意味を正しく理解していないんだよね。

大半がそんな状態なのに、その人に「あなたはアセクシュアル・アロマンティックですか？」と聞いても、自分がそうなのか判断できるはずもない。

例えば、さっきは「14.7%」という非常に高い割合を報告した東京大学の研究も紹介したけど、これは「性行為をした経験はあるか」や「ポルノを見ているか」といった「性的行動」の調査もセットで行っているんだよね。だからアセクシュアルを「性行為したことがない人」のように誤解させた可能性も否定できないよね。

そう。つまりそういうアセクシュアルやアロマンティックによくありがちな誤解を回答者に抱かせてしまったから、高い割合の結果になった…かもしれない。

こんなふうに、回答者のアセクシュアルやアロマンティックに関する基本知識といったリテラシーが、結果を大きく左右してしまうことがあるんだよ。

加えて、アセクシュアルやアロマンティックというのは、非常にスペクトラムのある概念であり、想像以上に範囲を広くカバーしている。もうここでも何度も説明していると思うけどね。決して「性的に惹かれるか、否か」という二択の話ではないよ。

だから「あなたはアセクシュアルですか？」と単純に質問しても、回答者で考えることはかなり違ってくるかもしれないよね。

アセクシュアルやアロマンティックに限らず、性的指向や恋愛的指向、性同一性（性自認）といったトピックは、誰かが白黒つけて診断したりできるものじゃない。個人の認識しだいだから、すごく調査で明らかにするのは大変なんだよ。

国、地域、宗教、人種、文化、年齢、教育、知識…いろいろな要素を分析しないといけないので、今後も調査の精度をあげる取り組みが必要だね。

うん。それは間違いない。そしてアセクシュアル・アロマンティックの人は世界中にいるのは確実だ。何人いようともその事実だけは同じだよ。