「アポシセクシュアル（アポシセクシャル / Apothisexual）」とは何ですか？ 定義は？

以前に別の場所で「性嫌悪があるからアセクシュアル（アセクシャル）…というわけではない」という話はしたと思う。

そこで説明したとおり、アセクシュアルかどうかを判断する指標として「性嫌悪」は関係ないのだけど、性嫌悪があるアセクシュアルがいるのも事実なわけで、そういう当時者にとって「性嫌悪があること」と「アセクシュアルであること」は密接だったりする。

実はこういう「性嫌悪があるアセクシュアル」の人のためのマイクロラベルがあるんだ。

うん。「アポシセクシュアル（アポシセクシャル）」と呼ぶよ。

英語では「apothisexual」と書くのだけど、この「アポシ（apothi）」という部分はギリシャ語に由来していて「拒絶する」という意味があるそうだよ。

そうだね。アセクシュアル・スペクトラムの中に包括されるいろいろなマイクロラベルのうちのひとつだね。

まず性嫌悪がある。そして性的魅力を感じないとか、性的関係を持たないというアセクシュアルとしての性的指向もある。この両方を満たす人のことだね。

何をして何をしないのかはその人の個人差があるので一概には言えないのだけど、性嫌悪があるという前提で、その嫌悪感をもたらすような行為はしないと考えられるね。

うん。ハグなら全然大丈夫という人もいるし、ハグでも性嫌悪があるから嫌だという人もいる。それはキスでも他の行為でも同じだね。

行為だけでなく、例えば、性的なシーンのある映画などの映像作品だったり、小説だったり、漫画だったり、イラストだったり、はたまた性的な話題をともなう会話だったり、そういうことにも性嫌悪を感じる人はいるよ。

誤解しないでほしいのは、性嫌悪というのは「性的関係を持てないからひねくれて反発している」という意味ではないということだね。そもそも性的関係や接触をしたくないと思っているのであり、真逆のことだから。

かといって「何に性嫌悪を感じているのですか？」なんて失礼なことは聞けないしね。こればかりは相手を尊重して、深入りはせず、丁寧に接するべきだね。

そういう場合はあえてそう公表しているのだから、しっかりそれを受け止めて、フェアに対応するべきだと思うよ。

別に「腫れ物に触るよう扱いなさい」と言っているわけではないからね。アポシセクシュアルであろうが、他のアセクシュアルであろうが、アセクシュアルではない人であろうが、とにかく対等に接すればいい。性嫌悪がある人もいるという想定のうえでね。

アポシセクシュアルという言葉を紹介したわけだけど、性嫌悪を感じるアセクシュアルの人はみんな「アポシセクシュアル」と名乗らないといけないわけではないよ。

そう。ラベルというのは強制的に区分しているわけじゃないからね。あくまでエンパワーメントを与えるためにある。この「アポシセクシュアル」という言葉で肯定感を得られるなら使ってみるくらいでいいと思う。

アセクシュアルというだけでは自分を肯定しきれないとか、なんだかしっくりこないと思った場合…とかかな。「私は性嫌悪のあるアセクシュアルです」とイチイチ説明したくない人も使うかもね。

アポシセクシュアルという言葉があるからといって、アセクシュアルという言葉が「性嫌悪がない」という意味になるわけではない。何度も言うように、性嫌悪があるアセクシュアルの人が全員が「アポシセクシュアル」を名乗るわけではない。アポシセクシュアルを名乗っていないけど、性嫌悪があるアセクシュアルの人はいるからね。

それとアポシセクシュアルはあくまで性的関係の話なので、恋愛関係は考慮していません。だからアポシセクシュアルの人でも他者と恋愛関係を持つことはあります。逆に恋愛嫌悪ゆえに恋愛関係を持たない人は「アポシロマンティック」と呼んだりもします。性嫌悪と恋愛嫌悪があってアセクシュアルとアロマンティックであるならば、「アポシセクシュアル＆アポシロマンティック（apothi aroace）」と表現できます。

最後に言っておくと、性嫌悪があることは悪いことではありません。異常でもないですし、わりと普通のことです。後ろめたく思わないようにしましょう。