- Qアセクシュアル(アセクシャル)やアロマンティックの人は恋愛小説や恋愛映画など恋愛の描写がある作品を好まないのですか?
- A
そうとは限りません。アセクシュアルやアロマンティックの中には恋愛作品が嫌いだったり、苦手な人もいますが、一方で恋愛作品を積極的に楽しんだり、中には創作する人もいます。
恋愛作品を楽しむかどうかは趣味の問題

世の中にはたくさん恋愛作品がありますよね。漫画も、小説も、ドラマも、映画も…。

そうだね。「恋愛」というジャンルではなくても、作品内に恋愛の要素が当たり前のように含まれているものも多いよね。大ヒットするような作品でも…。まあ、大半は異性愛だけど。

疑問なのですが、アセクシュアルやアロマンティックの人はこういう恋愛作品は楽しまないのかな? 嫌っていたりするものですか?

アセクシュアルの人は「他者に性的に惹かれない」だから、恋愛はするかもしれないけど、確かにアロマンティックの人は「他者に恋愛的に惹かれない」ので、恋愛関係を持とうとはしないね。

じゃあやっぱり恋愛作品も好きじゃないんだよね。

いや、そう決めつけるのは良くないよ。

え? そうなんですか?

アロマンティックの人でも恋愛作品を観たり、読んだりして、ごく普通に楽しむことはあるよ。

でも恋愛はしないんですよね?

自分が恋愛をしないからと言って、恋愛の作品を楽しめないとは限らない。それとこれとは別だよ。

そういうものなのかな。

例えば、異性愛の人が同性愛を描く作品を楽しむことはあるし、同性愛の人が異性愛を描く作品を楽しむこともある。同じように無性愛の人が異性愛や同性愛などの恋愛を描く作品を楽しむことだって当然あるんだ。

そっか、そう言われてみると別に変ではないのか。

もちろんアセクシュアルやアロマンティックの人の中には恋愛作品を楽しまない、嫌う、避ける…そういう人もいるけどね。でもそれは性的指向や恋愛的指向と直接的な関係はないし、アセクシュアルやアロマンティックを説明する特徴にはならないんだ。

勝手にそう思い込んでしまいがちだけど…。

これは性的指向や恋愛的指向ではなく「趣味」の問題が大きいね。だいたいどんな作品が好きか嫌いかなんて個人の趣味でしょ? 単に恋愛作品と言っても「私はこういうタイプの恋愛作品が好き、あのタイプは嫌い」という人もいるし、「恋愛よりもアクションの方が断然面白いね!」という人だっている。

そうか、趣味…。確かにそうですね。
恋愛作品のアンチではない

アセクシュアルやアロマンティックの人は恋愛作品を嫌っていると思い込んでいる人も多いんじゃないかな。

そうなんだよね。恋愛作品のアンチだと思われたりね。もしくは恋愛作品を観たら拒絶反応で発作でも起こすかのように扱われたり…。

勝手にそう決めつけられるのは嫌ですね。

また、アセクシュアルやアロマンティック当事者でも「自分は恋愛作品を受け付けないからアセクシュアルやアロマンティックなんだ」と確信している人もいる。

ふむふむ。

でもよく考えてみると「恋愛作品が嫌い」という漠然とした感情の中には「恋愛伴侶規範が嫌い」とか「性愛至上主義が嫌い」とか、そういう別個の理由が隠れていたりするんだよね。

嫌いな理由を具体的に整理するんだね。

それってつまりアセクシュアルやアロマンティックらしい動機だよね。だからアセクシュアルやアロマンティックの人の中には「恋愛作品が嫌い」ということでしか自分のモヤモヤを表わせられない人がいるのも納得できる話だと思うよ。

個人の考え方の整理整頓の具合にもよるよね。

恋愛伴侶規範や性愛至上主義が無い恋愛作品だったら案外とすんなり好きになったりするかもだしね。逆にアセクシュアルやアロマンティックではない人の中にも「恋愛作品が嫌い(こういう恋愛描写は嫌い)」という人は案外といるということも理解しておくといいんじゃないかな。

「私はアセクシュアルやアロマンティックだから恋愛作品もどうせ楽しめないんだ…」と思い詰めることもないってこと?

無理に恋愛作品を楽しもうとする必要はないけどね。趣味として気楽に構えればいいと思う。

ともかく、恋愛作品が好きか嫌いかで、アセクシュアルやアロマンティックかどうかを判断はできないということだよね。

そのとおりです。
恋愛作品を作る側になる人も

アロマンティックの人は自分では恋愛はしないのに、どうやって恋愛作品を楽しむの?

それは人それぞれだね。他人の恋愛を外から見物するのが好きという人もいるし、自分が恋愛をしたかのような気持ちになって楽しむ人もいるし、完全にファンタジーだと思って満喫する人もいる。表面的に描写されている恋愛感情の中にある他の魅力を探って満足感を得る人だっているよ。

アロマンティックの人にしかわからない楽しみ方なのかな。

そんなことはないんじゃない? 例えば、大半の人は宇宙に行ったことがないけど、宇宙を舞台にした映画を楽しんだりはできる。宇宙に興味がなくても映像に圧倒されることもある。それって珍しい話ではないよね。

創作物は自分の経験や興味に収まらない刺激を与えることもあるもんね。

それにアセクシュアルやアロマンティックの当事者の中には、まさに恋愛作品を作る側として活躍している人もいるんだよ。

へぇ~!

例えば、「アリス・オズマン」というイギリスの作家がいるんだけど、その人は賞をもらっているほど業界では有名で、手がけた作品の中には『HEARTSTOPPER ハートストッパー』という青春学園モノのグラフィックノベルもあって、恋愛がテーマになっている。この作者のアリス・オズマンは自分はアセクシュアル&アロマンティックだと公表しているよ。

すごい。恋愛作品の第一線で活躍されているんだね。

もちろん他にも多くのアセクシュアルやアロマンティックの当事者であるクリエイターがいるからね。恋愛作品を楽しめないどころか、楽しめる恋愛作品をどんどん生み出しているんだよ。

アセクシュアルやアロマンティックだからって恋愛作品には縁がないというわけではないことがわかるね。

そう。アセクシュアルやアロマンティックの人は「恋愛がわからない」と思われやすいけど、そうではない。恋愛を題材にするときの向き合い方がより広がる可能性を持っていると言えるかもね。

アセクシュアルやアロマンティックの人相手でも「最近は何か恋愛作品を楽しんだ?」と聞いてもいいんだよね。

うん、それで「この恋愛作品を楽しんだ」と言われても「アセクシュアル・アロマンティックなのに?」と追及するのはやめてほしいけどね。逆に「自分はアセクシュアル・アロマンティックなのに恋愛作品を楽しんでいるとか言ったら変に思われるかな」と当事者も悩まなくても大丈夫だよ。
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編集部コメント
恋愛作品を楽しめるかどうかは性的指向や恋愛的指向だけで決定されるわけではありません。アセクシュアルやアロマンティックだからといって恋愛作品を楽しめない人間だと決めつけてはいけません。それは偏見です。アセクシュアルやアロマンティックでも自由に恋愛作品を楽しんで構いませんし、創作者になることだってできます。