「エースフラックス（Aceflux）」とは何ですか？ 定義は？

おさらいをするけど、他者に性的に惹かれない「アセクシュアル（アセクシャル）」はわかるね？

そのアセクシュアルは広義の意味で捉えることもでき、その中にはマイクロラベルとして「グレーセクシュアル」や「デミセクシュアル」といった性的指向もある。これも理解している？

だからその広義のアセクシュアルを「アセクシュアル・スペクトラム」と言ったりする。もしくはアセクシュアルの愛称でもある「Ace」という呼び方をすることもある。

そのひとつひとつの性的指向の解説は個別でやっているので、そっちを参考にしてほしいのだけど…。

ではここで疑問。アセクシュアルからグレーセクシュアルに…とか、グレーセクシュアルからデミセクシュアルに…とか、そういう性的指向が変化することはあると思う？

答えを言ってしまうと「ありうる」。そしてそういうふうに主にアセクシュアル・スペクトラムの中で性的指向が流動的に変化するという人のための性的指向のラベルが「エースフラックス」だよ。

英語では「aceflux」と書くけど、「フラックス（flux）」というのは「流動」という意味だね。

さっきも言ったように、一切性的に惹かれないアセクシュアルから、ほんのわずかに性的に惹かれることもあるグレーセクシュアルへと変化したり。はたまた、最初は性的に惹かれずに後になって性的魅力を感じるデミセクシュアルから、一切性的に惹かれないアセクシュアルへと変化したり。とにかくアセクシュアル・スペクトラム内で性的指向が流動するのが基本だね。

それも場合によってある。アセクシュアルからアセクシュアルではない性的指向、つまりアロセクシュアルへのときに流動する、そういう人もエースフラックスの中にはいるよ。

うん。ただし、基本的にはアセクシュアル・スペクトラムの中を中心に流動していることが多く、そういう人のためのラベルがこのエースフラックスだね。

別にスイッチで切り替わるみたいにわかりやすいというわけでもない。これは人それぞれ違うから一概には言えないのだけど、あくまでスペクトラムだからもともと幅があるものだ。なのでその幅の中できっちり区分できない人もいるって感じで捉えてくれればいいと思う。

ただこのエースフラックスは誤解も多いのでいろいろと説明がいる部分もある。

まずその人の気分で自由に性的指向を選択しているわけではないということ。今日は「アセクシュアル」、明後日は「デミセクシュアル」…というようにその日の着ていく服装を選定するみたいに性的指向を決めていることではないから、誤解しないでね。

それに関連するけど、エースフラックスという概念があるからといって、アセクシュアルの人をアセクシュアルではない性的指向に矯正することはできないし、その口実にもならない。

また、エースフラックスというのは気分の移り変わりではない。例えば、普段は性的関係を持つことを平常的にしている人が「最近はそんな気分じゃないな～」と性的関係を持たない生活をしたとする。これをエースフラックスとは呼ばない。

これは何度も繰り返すけど、エースフラックスは性的指向のひとつだ。性的指向として適切に扱わないといけないよ。

それは「アロフラックス（Aroflux）」というラベルがあるよ。

そう、流動的な性的指向でも変に思うことはないよ。エースフラックスという言葉で自分の肯定感が得られるなら意識してみるのはどうかな。