「オートセクシュアル（オートセクシャル / Autosexual）」とは何ですか？ 定義は？

突然だけど考えてみてほしい。あなたは自分自身に性的魅力を感じる？

性的指向というものを説明したよね。誰に性的に惹かれるのかで、いくつに分けられる…。

うん、そうだね。それは全部「他者」に対して惹かれるかどうかを前提にしていたよね。そうじゃなくて「自分」に惹かれる場合はどうだろう？

他者ではなく自分自身に性的に魅力を感じるという性的指向もあって、これは「オートセクシュアル（オートセクシャル）」と名付けられているよ。

そう、そのオート。英語では「autosexual」となるね。

実は前からあって、1989年に心理学の中で提唱されていたのだけど、そのときはまだ性的指向として位置付けられているわけではなかったんだ。自己愛性パーソナリティ障害なんかと混同されて用いられてきたけど、今はそういうことはないよ。

そのとおりだよ。

オートセクシュアルはその説明が人によっていろいろ違ってくるのだけど、一般的には「自分自身に性的魅力を感じる」と語られることが多い。たいていは他人には性的魅力を感じられない状態が付随してくるね。

そう言える人もいるかもね。でもそれをどういうかたちで認識するかは個人差がある。例えば、他人とのセックスよりも自慰（マスターベーション）を好むから自分はオートセクシュアルだと捉える人もいる。

だからといって自慰をしたことがあるってだけでその人がオートセクシュアルだというわけではないからね。

また、自分で自分に関する性的な空想に耽ったり、自分の裸を鏡で見たりすることで性的な感情を得られるという人の中に、自分をオートセクシュアルだと認識する人もいる。

さらには、自分自身ががセックスしているのを眺めるのが好きとか、自分にいろいろな点で似ている人に惹かれるというのも、オートセクシュアルのよくあるサインとして挙げられることもあるね。

大雑把な共通項としては「他者」よりも「自分」を性的魅力の中心に置いていると言えるのかもしれないね。

ここで挙げたもの以外にもオートセクシュアルを説明するような実例はいくらでもあるので、あくまで参考程度に認識してね。

このオートセクシュアル、やっぱりというか、誤解も多くて…。なのでいくつかを説明しようと思うけど…。

うん。オートセクシュアルを「ナルシシズム（自己愛）」と混同することは一番よくある誤解のひとつだろうね。

そうだね。ナルシシズムはあくまで心理学の用語であり、自分に性的に酔うことで他者への共感性が低いなど、そういう異常性を意味するものとして扱われてきたんだよ。

対するオートセクシュアルの人は別に他者に共感しないわけではない。他者への思いやりを持つこともできるし、そこはオートセクシュアルではない人と何も変わらない。あくまで自分に性的に惹かれるというただそれだけだよ。

初期の頃はね。今は完全に別物として言葉が位置付けられているので、誤解をしないように注意しよう。

あとは「オートエロティシズム」と誤解されることもあるね。

オートエロティシズムというのは、自慰行為など自分で自分に性的快楽を与えるためのいろいろな行動を意味していて、中にはセルフ窒息プレイや自縛など危険な行為も含まれるのだけど…。とにかくこのオートエロティシズムはあくまで行動を意味するもので、オートセクシュアルのように性的指向を示すものではないよ。

そうそう、オートセクシュアルと言っても性的魅力の話なので、他者に恋愛感情を感じる人はいるよ。

そういう人は「オートロマンティック」という恋愛的指向として認識できる。中にはオートセクシュアルでオートロマンティックという人もいるだろうね。

とにかく自分自身に性的魅力を感じる場合でもそれは変なことじゃない。それは異常でも己惚れでも陶酔でもなく、ごく普通の性的指向のひとつだよ。