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トランプ政権の影響で「LGBTQ」が「LGB」に。アセクシュアル/アロマンティックも排除される

LGBTQがLGBに

2025年1月にアメリカ大統領に就任したドナルド・トランプは、2度目の政権でLGBTQを激しく攻撃し、平等な権利を奪う政策を続々と実行しています。例えば、「性別は男性と女性の2つしかない(性別は受精時に決定する)」とする大統領令を出し、トランスジェンダーやインターセックスの人々を狙い撃ちにしていました。そんな中、アセクシュアル/アロマンティック(無性愛)の当事者もその攻撃によって脅かされつつあります。

「LGBTQ」「LGBTQIA+」→「LGB」

2025年のトランプ政権における性的マイノリティへの攻撃の最新の事例となっているのが「LGBT」の用語を使用禁止にする動きです。「LGBT」というのはさまざまなセクシュアル・マイノリティが社会的に連帯して活動する際の言葉であり、「LGBTQ」「LGBTQIA+」といった派生用語も使われてきました。

この用語にはアセクシュアルやアロマンティックも当然ながら包括されており、性的マイノリティ同士が差別することなく、手を取り合って連携しようという意思が込められていました

しかし、トランプ政権はこの「LGBT」(それに関連する派生用語も含めて)という言葉を、まず行政に関連した活動内や研究で使用禁止にする圧力をかけています。さらにそれだけでなく、「LGB」に変えようとしています。

これはトランスジェンダーを真っ先に狙った排除攻撃ですが、同時に他の多くのラベルを用いる性的マイノリティも排除されてしまっており、アセクシュアル/アロマンティックも例外ではありません。

実質的に「レズビアン(L)」「ゲイ(G)」「バイセクシュアル(B)」だけが性的マイノリティであるとトランプ政権は主張しているのと同じです。

すでに影響は出始めており、米国立公園局は2025年2月14日、性的少数者の権利運動の原点となった1969年の「ストーンウォールの反乱」の記念碑に関するウェブサイトにおいて、「LGBTQ」の言葉を「LGB」に変更し、トランスジェンダーと他の性的マイノリティの言及を削除しました。また、メディア「LGBTQ Nation」の報道によれば、レインボープライドフラッグを単に「LGBフラッグ」と呼ぶように書き換えられたとのことです。

性的マイノリティ当事者は連帯して反対の声をあげる

こうした一連のトランプ政権によるLGBTQへの攻撃に対し、性的マイノリティの当事者は連帯して反対の声をあげています。

先ほどの米国立公園局の件でも、ニューヨーク市内で抗議デモが開催され、数百人が参加。性的マイノリティの連帯を示し、分断を拒否していました。

ニューヨーク市議会議員のエリック・ボッチャー氏は、「トランプは私たちのコミュニティを分裂させ、分断しようとしている。成功しないだろう。私たちはひとつのコミュニティだ」とコメントしています。

アセクシュアル/アロマンティックも攻撃の対象に

アセクシュアル/アロマンティックについてはあまり報じられにくいですが、間違いなくこのトランプ政権によるLGBTQへの攻撃による悪影響を受けています。

以前からトランスジェンダーを差別する活動をしている人たちがネット上などでアセクシュアルにも関係する差別や偏見をばらまいている状況が観察されていました。

右派や保守派の反LGBTQの勢力の中では、アセクシュアルやアロマンティックに対して「性的マイノリティになりたがっているだけ、思い込んでいるだけの人間だ」といった誹謗中傷もみられていました。

これらのアメリカで政治によって巻き起こっている反LGBTQの波は、日本にも悪影響を与える可能性があります。現在の日本の政権は、アセクシュアル/アロマンティックを含むLGBTQの権利平等に関心を持っておらず、明確な差別を禁止する姿勢をとろうとしていません。日本の政府もトランプ政権のアメリカに同調すれば、ますます日本の性的マイノリティが望む「差別のない社会」は遠のいてしまうでしょう。