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TERF(トランスジェンダー差別主義者)によるアセクシュアル差別に活動家が警鐘を鳴らす:第二次性徴抑制剤が子どもをアセクシュアルにしている?

トランスジェンダー差別主義者がアセクシュアル差別も

深刻化するトランスジェンダー差別

今、日本を含めて世界中でトランスジェンダー(出生時に決められた性別と、自分が自認するジェンダーが異なる人)への差別が深刻化しており問題になっています。こうしたトランスジェンダーへの差別や偏見は「トランスフォビア」(トランスフォーブ)と呼ばれており、デマや恐怖を煽る情報も大量に拡散されています。

例えば、トイレや更衣室など女性スペースにトランスジェンダー女性が立ち入ることで、トランスジェンダーではない女性(シスジェンダーの女性)の安全が脅かされると主張している人々もいますし、スポーツの女子部門にトランスジェンダー女性のアスリートが参加することでスポーツの公平性が損なわれると訴える人もいます。しかし、いずれもそのようなことが起きていることを示す科学的な証拠はなく、無知や偏見に基づく過剰なパニックであると専門家は指摘しています(NBCNewsTimeAmerican Psychological Association)。

このようにトランスジェンダー女性の権利と、一般の女性(主にシスジェンダー)の権利は相反するものだと考え、トランスジェンダーを排除しようとする(もしくはトランスジェンダーの概念そのものを軽視する)人々は「TERF(ターフ)」と呼ばれたりすることもあります。これは「トランス排除的ラディカルフェミニスト」の頭文字をとったものです。

著名なTERFの人物もいて、有名なのは「ハリー・ポッター」の作者である“J・K・ローリング”です。“J・K・ローリング”はこれまでも幾度となくトランスジェンダー差別的な発言を繰り返しており、多くの人々に批判されていますが、同時にTERFからは絶大な支持を集めてもおり、そういう人々は「#IStandWithJKRowling」といったハッシュタグを好んで使用している特徴があります。

TERFのようなトランスジェンダー差別的な人たちは、性的少数者の中にも存在し、そういう人たちは「LGBT」という連帯を意味する用語を嫌い、トランスジェンダーの「T」を排除し、「LGB」という言葉を利用したがります。例を挙げると、トランスジェンダー差別的なセクシュアル・マイノリティの組織として「LGB Alliance」などが存在します。

アセクシュアル差別的な主張まで現る

この世界で深刻化するトランスジェンダー差別。どうやらアセクシュアル(アセクシャル)やアロマンティックの人々にとっても無縁ではないようです。

アセクシュアル・アロマンティックの当事者としてその権利のために活動していて、メディアにもよく取り上げられているアクティビズトの「ヤスミン・ブノワ(Yasmin Benoit)」は、最近もイギリスでアセクシュアルの大規模な調査プロジェクトを展開するなど中心的な役割を担っています。そんなヤスミン・ブノワはTERFなどのトランスジェンダー差別主義者がアセクシュアル差別的な主張を展開し始めていることを「inews.co.uk」の中で伝えました。

具体的には、トランスジェンダーだと自認するようになった子どもの中でも、とくに性別移行(トランジション)を望む子の間で使用されることになる「思春期遮断薬(第二次性徴抑制剤)」(Puberty Blockers)について、それを利用することで子どもがアセクシュアルにされている…という主張です。

無論、これは誤りです。性別移行に用いられるホルモン療法を含むどんな医療的処置であっても、子どもがアセクシュアルに強制的に変えられることはありません。そもそもアセクシュアルは性的指向であり、何かの処置によって生み出されるものではありません。しかし、一部のトランスジェンダー差別主義者はアセクシュアルをそんな医療的失敗の副産物のように認識し、差別を煽っているようです。一部のトランスジェンダー差別主義者は「(ヤスミン・ブノワのような)アセクシュアルの活動家がトランスジェンダーの性別移行を支援する組織と手を組んでいるのは、こういうトランス関連の医療の不正を隠蔽し、金儲けを企んでいるから」だと考えているとヤスミン・ブノワは指摘します。

もう一度繰り返しますが、思春期遮断薬(第二次性徴抑制剤)が人をアセクシュアル(無性愛)に変えるということはありません。ホルモン療法が子どもをアセクシュアルに変えることもありません。根拠のないデマです。性別移行をしたためにセックスや恋愛ができなくなってしまい、後悔する人が増えているという事実もありません。

トランスジェンダーの人の中にはアセクシュアルやアロマンティックの人もいますが、それは医療的処置とは関係なく、ごく普通のことです。アセクシュアルやアロマンティックの人々は、その人のジェンダーに関係することなく、子どもでも大人でも一般的に社会に存在しています。

日本でも同様の主張が拡大するかも

アセクシュアルへの差別は以前からありましたが、TERFなどのトランスジェンダー差別主義者が陰謀論的にアセクシュアル差別までも主張しているという報告は当事者にとってはショックなものです。

これと同じような主張は今後日本でも拡散していくかもしれません。これまでの傾向を言えば、海外で流行ったトランスジェンダー差別的な主張や陰謀論の多くは日本でも流行します。

まずこのようなアセクシュアル差別をともなう主張をトランスジェンダー差別主義者が語っていたとしても、安易に拡散するようなことはせず、正しい専門的な情報だけにアクセスするようにしてください

もし差別的な主張を目にしてしまったり、耳にしてしまった場合、当事者の中には心が深く傷つく人もいるでしょう。あなたは何も悪くありません。差別的な言動から退避できるときは速やかに逃げてください。自分の心を守ることを最優先にしましょう。

また、アセクシュアルやアロマンティック当事者の人も、トランスジェンダー差別主義者の主張に流されないように、常に正しいトランスジェンダーの知識を身につけておくようにしましょう。これは自分を誤情報から守るためにも欠かせませんし、加害者にならないようにすることにも繋がります。

はじめてのトランスジェンダー trans101.jpといったウェブサイトは、トランスジェンダーに関してわかりやすい説明があり、誤情報に関する専門的な解説もあるので便利です。

あらゆる性的指向・恋愛的指向や性自認(ジェンダー・アイデンティティ)は等しく尊重されるべきです。この世から差別をなくし、平等を実現するには連帯することが大切です。