SNSと違って差別的コメントや不快な広告が一切ない安心の空間です。

『ハリー・ポッター』原作者のJ・K・ローリングがアセクシュアル差別発言で批判を浴びる

『ハリーポッター』原作者のJKローリングがアセクシュアル差別発言

世界中で大人気となり、映画化されて話題にもなった『ハリー・ポッター』。その原作者であるイギリス人の“J・K・ローリング”は、反LGBTQの姿勢でも知られており、とくにトランスジェンダー差別の言動を繰り返すことで、LGBTQコミュニティから厳しく批判されてきました。しかし、2025年はアセクシュアル(アセクシャル)にも明確に攻撃の手を伸ばしてきました。

J・K・ローリングのアセクシュアル差別投稿

問題となったのは、2025年、「国際アセクシュアルの日(International Asexuality Day)」である4月6日に合わせて、“J・K・ローリング”のSNSアカウント(こちらも反LGBTQの姿勢で有名な“イーロン・マスク”が運営する「X」のサービス)にて投稿した文章です。

そこには国際アセクシュアルの日の画像を付随するかたちで「セックスに興味がないことを赤の他人に知らせたいすべての人に、国際偽装抑圧デーおめでとう」と揶揄するコメントが載せられました(実際の英文は以下のとおり)。

Happy International Fake Oppression Day to everyone who wants complete strangers to know they don’t fancy a shag.

“J・K・ローリング”のこの投稿はすぐさまLGBTQコミュニティから厳しく非難されました。

J・K・ローリングのトランスジェンダー差別の経緯

“J・K・ローリング”がSNS上でLGBTQへの差別を本格化し始めたのは、最初はトランスジェンダーに対してでした。

2018年3月にトランスジェンダーの女性を「ドレスを着た男性」と呼ぶツイート(当時は「Twitter」というサービス名)に「いいね」をしました。当時はこれは「操作ミス」と広報は説明しました。

しかし、2019年6月に“J・K・ローリング”はSNSで「自称​​トランスフォビア」と名乗るトランスジェンダー差別的なYouTuberをフォローし、2019年12月にはトランスジェンダー差別発言の後に仕事の契約が続かなかった人物を支持するコメントをだしました。

その後、2020年5月にまたもトランスジェンダー差別的な投稿に「いいね」をし、そして2020年6月6日に「月経のある人々」というフレーズを使うことについての投稿で、“J・K・ローリング”のトランスジェンダーに対する差別姿勢が急激に悪化し、論争を巻き起こしました。「女性」ではなく「月経のある人々」というフレーズが使われるのは、全ての女性に月経があるわけではないためですが、“J・K・ローリング”はこれを「女性の現実が抹消されている」と主張しました。

以降、“J・K・ローリング”のトランスジェンダー差別の姿勢は常態化し、ますます苛烈になり、保守的もしくは極右的な反LGBTQの勢力とどんどん親交を深めて今に至ります。著名人で超富裕層でもある“J・K・ローリング”の発信力は甚大で、たったひとつの差別的な発言でも火に油を注ぐにはじゅうぶんすぎる状況です。

トランスジェンダー差別とアセクシュアル差別の連動が今後も悪化?

トランスジェンダー差別をしている人がアセクシュアル差別にも手を広げていくという現象は、以前から専門家によって指摘されていました。

アセクシュアルやアロマンティックに対して性的マイノリティになりたがっているだけ、思い込んでいるだけの人間だ」「無性愛者は何も差別や抑圧を経験していないといった事実に反する誹謗中傷がネット上で蔓延しています。

実際は、アセクシュアルやアロマンティックの当事者は、転向療法(矯正レイプ)、性差別や性暴力、病理化などさまざまな抑圧を経験しています。そして今回のように「嘘つき」呼ばわりされて傷ついている当事者が大勢います。

アセクシュアル・アロマンティックの当事者としてその権利のために活動している“ヤスミン・ブノワ”は、今回の“J・K・ローリング”の発言を厳しく非難し、「多くの人が、(アセクシュアルは)精神障害だと言っています。中には、抗うつ薬の副作用だ、あるいはトランスジェンダー政策の一環だと言う人もいます」と偏見の一例を述べました。イギリスの調査によれば、国民の3人に1人は無性愛は「治せる」と考えており、26%は無性愛者はふさわしい相手に出会っていないだけと考え、11%は無性愛者は存在しないと考えていることが判明しており、誤解や偏見が根深いことが示されてもいます。

2025年1月から始動したアメリカのドナルド・トランプ政権も、「LGBT」の用語を使用禁止にし、「LGB」に変更する動きが観察されました。これはトランスジェンダーやアセクシュアルを共に排除するものです。

トランスジェンダーやアセクシュアルを排除しようと活動している団体としてイギリスには「LGBアライアンス(LGB Alliance)」といった存在もあります。“J・K・ローリング”は「LGBアライアンス」を支持する姿勢をかねてから示しており、今回の2025年のアセクシュアルを揶揄する投稿もその経緯を踏まえると驚くようなものではありません。

日本でもトランスジェンダー差別的な言説はネットを中心に拡大していますが、さらにアセクシュアルに対する差別へと広がり、最終的には性的マイノリティ全体の権利や平等を後退させる危険性があり、注意が必要です。