アセクシュアル（アセクシャル）は性的暴力などのトラウマが原因でそうなるのですか？

けど？

確かに性的暴力などの性的被害は深刻な社会問題だよね。毎年たくさんの人が日常的に被害に遭っているし、その対策は残念ながら日本ではあまり進んでいない。

日本では性的被害は少ないと思っている人もいるけど、性暴力事件も含めて明確に事件化することが少なく、被害者の大半は被害を警察に訴えたりしないとも言われている。だから過小評価されているんだよね。

そうだね。性的被害者の多くは周囲から責められやすく、また自分で自分を責める人も多いし、ケアをする保護の体制も整っていない。とても不利な状況にあるよ。

で、話を本題に移すけど、アセクシュアルは性的被害などのトラウマが原因でそうなるのではないか？…そういう質問だったね。

まず一般的にはアセクシュアルと性的トラウマに直接的な因果関係はないよ。少なくともそんな証拠はない。

もちろんアセクシュアルの人の中には性的被害を受けてトラウマを抱えている人だっているだろうし、それを軽視することはできない。でもアセクシュアルではない人の中にも性的被害を受けてトラウマを抱えている人は普通にいるし、とくにアセクシュアル特有の関連性があるわけではないよ。

気持ちはわからなくもないけど、でもよく考えてほしい。そもそもアセクシュアルは性的指向だよね。

異性愛や同性愛も性的指向だけど、なぜ異性愛や同性愛になったのかと原因を問うようなことをするかな？

アセクシュアルに対して「性的トラウマが原因では？」という発想が生じてしまうのは、その背景に「アセクシュアルは普通とは違う、異常な状態である」という認識があるからではないか。そういう偏見が潜んでいるかもしれないよね。

そもそもアセクシュアルに限らず特定の性的指向に対してその「原因」や「理由」を問いただすのはとても失礼な行為だよ。不快感を与えることが多いと思う。

誰かが「私はアセクシュアルです」と言ったとしよう。そのとき「なぜだろう」と思ってもそれを口に出して質問するのはやめよう。当事者に理由や原因を考えるように仕向けること自体がときにはトラウマを与えるということを忘れないでね。

別にその人がアセクシュアルだと認識するのは全然構わないことだよ。でも必ずアセクシュアルだということになるわけでもない。これは本人が自分の性的指向を見つめながら答えを出すものだから。

アセクシュアルは、セックスをしないという意味ではない。性嫌悪があるという意味でもない。あくまで単なる性的指向のひとつだからね。

とはいえ、何らかのトラウマを抱えた状態で自分の性的指向について考えるというのは難しいことも多いと思う。心身の健康や日常生活に支障をきたしている場合は、まずはトラウマのケアを優先しよう。性的指向を明らかにすることは人生に必須ではないし、何も焦ってやることじゃないから。

性的トラウマがあると明確に自覚したうえでアセクシュアルであると認識している当事者もいるけど、それはそれで何も変なことではないので不安にならないでください。「ケイドセクシュアル」というラベルもあったりするし…。

仮にそういう当事者の性的トラウマが緩和や解消されたとしても、アセクシュアルでなくなってしまうということではないからね。安心してケアなどのサポートを受けてください。

直接的な関連性はない。でも個々人が抱える性的トラウマを軽視していいわけではなく、ちゃんとトラウマのケアを優先した方がいい。そういうことだね。