「性的指向」とは何ですか？「性的嗜好」との違いは？

「性的指向」はセクシュアル・マイノリティを語るときにおいても基本的な用語のひとつだけど、確かに案外とその意味はわかりにくいよね。

そうだね。わからないときは調べてみる。その姿勢は大切だから良いことだよ。

性的指向というのは英語では「sexual orientation」というよ。これは、その個人がどの性別/ジェンダーに惹かれるか、もしくは惹かれないかというパターンのことだよ。

そう、簡単に言うとそうなるね。例えば、自分の性別と異なる異性に惹かれるなら、その人の性的指向は「異性愛（ヘテロセクシュアル）」となる。また、同性に惹かれるなら「同性愛（ゲイ、レズビアン）」となる。男性にも女性にも惹かれるなら「両性愛（バイセクシュアル）」となるし、性別を問わずに惹かれるなら「全性愛（パンセクシャアル）」と言ったりもする。

そのとおり。他にも性的指向には種類があるけど、代表的なものはそんな感じだね。

まあ、それはかなり個人の感覚によるものが大きいのでひと言では説明しづらいよね。性的に惹かれたり、恋愛の感情で惹かれたり、もっと別の感情的な想いで惹かれたり…。惹かれるという魅力の概念は奥が深いね。

そう、だから「性的指向」は「性的に惹かれる」という意味だけを指し、「恋愛的に惹かれる」というパターンについては「恋愛的指向」という用語で分けて表現する場合もあるよ。

それについては「恋愛的指向」や「スプリット・アトラクション・モデル」として別のページで説明しているので、そっちを参考にしてね。

注意点としてはあくまで「どの性別/ジェンダーに惹かれるか」を対象にしているので、性別とは関係ないものは基本は含めないということだね。

例えば「ロングヘアが好き」とか「背の高い人に惹かれる」とか「40代くらいの人に夢中になりやすい」とか…。そういう「性別」ではなく、どの容姿や年齢などに惹かれるかというのは性的指向ではないよ。

もちろんそういうあれこれに「惹かれる」気持ちも大切なことには変わりないよ。ただ性的指向とは言わないというだけですね。

「指向」と「嗜好」…同じ「しこう」と読むので日本語ではかなり間違いやすい言葉だよね。変換ミスとかも起きやすい。でもこれは気をつけないといけないね。

う～んとね、まず「性的嗜好」というのは「sexual preference」という英語の訳語なのだけど、心理学などでは最初はこちらを使っていたんだよね。

でもこの言い方だとまるで「自分で自由に何に惹かれるかを選択できてしまう」かのように捉えかねないので、この「性的嗜好」という用語は使うのはやめようという話になったんだ。

うん。だから今は異性愛とか同性愛とかを示すときは「性的嗜好」ではなく「性的指向」を使うことになってるよ。

いや、それも正確には違うんだよね。「性的嗜好」は少なくとも心理学などの学術的な分野ではいかなる場合でも使用は推奨されない用語だから。それにそういう容姿や年齢などの好みだって「自分で自由に何に惹かれるかを選択できる」かどうかはわからないでしょ？

普通に「好み」と表現すればいいんじゃない？ 「服装の好み」とか「髪型の好み」とか「年齢の好み」とかだね。もしかしたら今後、全く新しい用語が登場するかもしれないけどね。

これはよくある誤解なのだけど、「性的指向は先天的で、性的嗜好は後天的」という主張もたまに聞かれる。でもこれは正しくないよ。

そう。そもそも性的指向にせよ、その他の好みにせよ、その原因のメカニズムは現在の科学でも明確にわかってないので、先天的か後天的かは断言できないよ。

良かったね。でも注意してね。性的指向はとても大切だけど、それはプライバシーでもある。そして残念ながら一部の性的指向は差別に遭いやすい。

だから性的指向を他人に安易に聞いてはいけないし、その情報はプライバシーとしてしっかり保護されないといけないよ。

でもタブー視することでもない。性的指向は身近なアイデンティティでもあるからね。それは忘れないようにしよう。

わからなくても焦る必要はないよ。自分の性的指向をどう理解するか、それは人それぞれだから、ゆっくり考えていけばいいし、考えたくないなら考えなくてもいい。