アセクシュアルやアロマンティックの定義は絶対なのですか？ 当てはまらないとダメなのですか？

うん、そうだね。

というと？

あ、なるほど、そういうことね。先に明言するとこの定義は絶対的なものじゃないよ。

うん。これは便宜的なものだからね。アセクシュアルやアロマンティックの定義は唯一無二ではない。色々な組織や団体が定義を打ち出しているけど、それぞれ微妙に表現が違っていたりするし…。

ほんの一例だけど、以下のようにアセクシュアルの定義や意味の解説は違っているよ。

そう、どれが正しいとかそういうわけじゃない。それぞれの組織や団体が考えたうえで、こうやって説明しているんだよね。

英語圏では「asexual」「ace」「aroace」「aro/ace」「asexual-spectrum」「a-spectrum」などの色々な用語を漠然と使い分けているのが現状だね。だから「アセクシュアル」という単語だけで全てを説明し尽くそうとはしていない感じかな。

気を付けてほしいのは、定義に国籍は存在しないということ。「日本の定義」とか「アメリカの定義」とか「海外の定義」というものはない。統一的な規格があるわけでもないからね。

そもそも「定義」という言葉を誤解している人も多いんじゃないかな？

定義を「絶対に従うべき基準」だとか「ルール」だと勘違いしている人は一定数いると思う。

この定義という概念自体の誤用はおそらく、世間に蔓延する論破カルチャーのせいもあるんだろうね。定義を自分勝手に持ち出して相手を言いくるめようとする人も中にはいるからね…。

定義というのは、あくまでその言葉を他の言葉で説明したものだよ。なぜそんなことをするのかと言えば、そうやって議論などを進めやすくしたり、理解を促進したりするためだね。つまり、便宜的な道具になるんだよね。

うん。あくまで定義は土台にすぎないから、ここから「じゃあ、こういう話はどうだろう？ これについてはどうする？」と議論を深めていく。

だから定義だって時代によって変わっていくこともよくある。

アセクシュアルやアロマンティックというのは、とても包括的な概念であり、本当に想像以上にいろいろな人をカバーしている。

そういう細かいマイクロラベルのことまで考えると、アセクシュアルなどの定義にそれらを網羅できていないことも多々あるよね。でも定義にないからって排除しているわけじゃない。

自分の性的指向などに悩んでいる人が「アセクシュアル」といった言葉に出会ったとき、真っ先に定義を調べるよね。でも定義の説明文だけで判断なんてしなくていい。

大切なのはあなた自身だよ。定義があなたを決めるんじゃない。あなたがあなたを決めるんだ。

もしあなたが「自分は世間のアセクシュアルの定義に当てはまっていない気がするけど、私はアセクシュアルなんじゃないかと思っている」と考えているなら、それはアセクシュアルということでいいんだよ。

100人の当事者がいれば、100通りのアセクシュアルやアロマンティックの定義がある。それくらいに考えてもいいかもね。

定義は他人をジャッジしたり、診断したりするためのものじゃない。だからそんな言葉は無視しよう。

もちろんそのとおり。定義は常に当事者のためにある。定義を正しく扱うことが大事だね。

まずそれはあくまで便宜的な定義にすぎないことを忠告しつつ、実際はとても包括的で幅広い概念であることを補足するといいと思うよ。できればさらに詳細がわかる資料やウェブサイトを紹介しておくのもいいんじゃないかな。

お互いに嫌な気持ちにならないためにも、言葉を丁寧に尽くしていきたいね。