恋愛関係以外で男女が仲良くなることはできますか？ 男女に友情は成立しないのですか？

そうだね。そういう人はどこかしらにいるもんだね。

最初にこっちも言い切っておくと…男女、つまり異性同士でも友情は成立するよ。というか友情の成立に性別は関係ないよ。

そのとおり。

それは「異性愛規範」というものが世の中に広まって根付いているからだよ。

異性愛規範。これは英語で「Heteronormativity（ヘテロノーマティビティ）」とも呼ぶよ。これはクィア理論の研究者であるマイケル・ワーナーという人が最初に考えだした言葉だ。

異性愛規範というのは簡単に言うと「男女であれば恋愛感情や性愛関係が自然と生じるものである」という考え方のことだ。もっと言えば「誰もが異性愛者であり、一夫一妻を望んでいる」という思想でもあるね。

そう。この異性愛規範に染まっている人は、男女を繋ぐものは恋愛や性愛以外はあり得ないと考えている。そこまで極端でなくとも、男女なら大なり小なり恋愛が芽生える可能性が想定されるものだと思っているというわけだね。

この異性愛規範というのを信じている人は社会には多いし、浸透してしまっている。

メディアや教育に原因があることが多いね。テレビでもインターネットでも異性愛規範を前提とした男女関係が頻繁に映し出されるし、幼い頃から男女には恋愛が芽生えるのだということを周囲の大人から教え込まれてしまう。マインドコントロールみたいに。

でもこれは押し付けでしかない。だから「規範」と呼んでいるんだ。

うん。例えば、同性愛者や両性愛者のように同性同士でも恋愛や性愛関係になる人はいる。異性同士だけが恋愛になりやすいわけではないよね。

それに、他者に性的に惹かれない「アセクシュアル（アセクシャル）」の人や、他者に恋愛的に惹かれない「アロマンティック」の人もいる。

もちろん同性愛者やアセクシュアル・アロマンティックではなくても、つまりどんな性的指向や恋愛的指向であっても、異性同士でも恋愛抜きで仲良くなりたいと考える人もいるよ。

要するに異性愛規範の何が問題なのかというと、こういう多様な性的指向や恋愛的指向、もしくは人間関係における価値観を否定しているんだよね。

今では異性愛規範は差別的なものとして世界で認識されているよ。

別に男女で恋愛関係になったっていい。でもならなくてもいい。人それぞれの関係性の在り方があるんだけどね。

そういうのをインターネットで調べるといろいろあれこれ出てくるよね、テクニックの解説みたいなのが。

どうだろうね。でもこれは要するにコミュニケーションの問題だよね。

つまり、自分が相手に対してどう思っているかを伝える。相手も自分をどう思っているのかを伝える。そういう相互理解が大事になってくるのかなと思うよ。そしてこれは異性だから同性だからとか、そういう性別に関係なく普遍的に大切なことだよね。

まずどんな関係を構築したいのか、その理想を互いに共有できると最初の一歩になるよね。ベストフレンド、対等な同僚、尊敬し合う先輩と後輩、趣味を語り合う仲間…。もしかしたら恋愛や性愛関係抜きでデートしたいとか、結婚したいと思う人もいるだろうし…。

ときには自分の性的指向や恋愛的指向を相手に伝えるべきか悩むこともあると思う。伝えることで理解してくれるのか、逆にギクシャクしてしまうのか、不安もあるものだね。

結局のところ、コミュニケーションに正解はない。模索するしかないんだよね。

いや、どうだろう。もしかしたら同性だからコミュニケーションできていると思いこんでいるだけで、本当は同性の人とも上手くコミュニケーションとれていないかもしれないよ。

ただ、ひとつハッキリと言えることはある。それは異性愛規範は人間関係を悪くさせるだけだからやめましょうということだよ。