- Qアセクシュアル(アセクシャル)やアロマンティックなどとラベルで分けるのは良くないのではないですか?
- A
これらのラベルは任意であり、強制ではありません。そのラベルが自分にとって良いものか、良くないものか、その判断は個人の自由であり、それは尊重されます。
ラベルは強制ではない
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「アセクシュアル」「ノンセクシュアル」「アロマンティック」といった言葉を使ったり、紹介すると、「そういうふうにラベル分けするのは良くない」という意見が寄せられることもあるのですけど…。
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それはよくありがちな意見のひとつだね。
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実際、良くないものなのですか?
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まず基本的に人が何を思おうがその人の自由だから「ラベル分けするのは良くない」という意見を否定するつもりはないよ。ただ、なぜそんな意見が飛び出しやすいのか、その背景を考えてみることにしようか。
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背景?
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うん。例えば、私たちは動物にそれぞれ名前を与えている。料理にもそれぞれ名前をつけている。髪形や服などファッションにも、住んでいる地域や国にも、あらゆるものに名前があるよね。
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そうですね。
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つまり、ラベルがあるんだよね。それらにおいて「ラベル分けするのは良くない」という意見を見かけたりする?
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いや…あんまり聞いたことないです…。
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じゃあ、なぜ性的指向や恋愛的指向にそれぞれ名前をつけると「ラベル分けするのは良くない」という意見が飛び出すのかな?
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う~ん、なんでだろう。こう、勝手に分類された気持ちになるからなのかな。
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そうだね。アセクシュアルやアロマンティックといった性的指向や恋愛的指向を示す各言葉に対して「ラベル分けするのは良くない」と否定的な反応を示す人は、その言葉を受け入れたくないとか納得していないとか、そういう理由があるのだろうなと察せられるね。
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まだ性的指向や恋愛的指向という概念の認知も浸透していないしね。そういう人がいるのもわかるけど…。
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それもそれでいいんだよ。まず勘違いしてほしくないのは、性的指向や恋愛的指向に関するラベルの言葉は別に強制じゃない。勝手に分類して押し付けるものでもない。これは任意であり、自分でどのラベルを使うか選んでいいんだ。
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選ばなくてもいいってこと?
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そのとおり。例えば、あなたが他者に性的に惹かれないとする。だから「アセクシュアル」だと名乗ってもいい。でも名乗らなくてもいい。別の言葉を自分で考えて名乗ったっていいよ。
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「勝手にラベル分けされるのか…」と不安にならなくてもいいんですね。
なぜラベルは必要なのか
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そもそもなぜこうしたラベルはあるのか?ということを考えてみるのも大事だよ。
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確かになぜなんだろう?
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その理由をシンプルに答えるなら、実在していることを世間にアピールして、存在感を保つためだと言える。
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存在感?
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例えば、他者に性的に惹かれない人は大昔からいっぱいいたと思うけど、それを表す明確な言葉がないとその存在を世間に示すことはできない。するとどうなると思う?
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無かったことにされる?
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うん、そうだね。下手するとみんな他者に性的に惹かれるもので、惹かれない人はいないと思われてしまうよね。でも「アセクシュアル」という言葉があると、その言葉が土台になって初めて認知されるようになる。そういう人もいるんだ…と。
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なるほど。言葉があるのとないのとでは全然違うよね。
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それだけじゃない。ラベルがあることで同じような人たちが集まれるようになる。すると「私だけじゃなかったんだ」と発見できる。
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仲間を見つけられるよね。
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これはいわゆる「アイデンティティ」だね。
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アイデンティティってよく聞く言葉だけど…。
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アイデンティティというのは個性という意味だと思われやすいけど、厳密には帰属意識のことで、自分を何と認識するか…という意味でもある。例えば、私は東京生まれで、イラストを描くのが好きで、チョコレートケーキが好物です…というのもアイデンティティになるよね。性的指向や恋愛的指向もアイデンティティになるよ。
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「私はアセクシュアルです」「アロマンティックです」…そういうのもアイデンティティということだね。
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そのアイデンティティの発見によって、勇気づけられたり、肯定感を得られたりした人もいると思う。こういうのを「エンパワーメント」と呼ぶよ。
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そっか、性的指向や恋愛的指向のラベルというのは単に機械的に分類しているんじゃなくて、その人のメリットになるためのものなんだね。
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なので性的指向や恋愛的指向にとってラベルはとても大事で、議論するうえでも大切な基本の材料になるものだよ。
ラベルは万能ではない
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一方で気を付けておきたいこともある。
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というと?
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性的指向や恋愛的指向のラベルは便利だし使い勝手がいいようにデザインされているけど、むやみやたらに濫用したり、誤解のままに使用すると、相手を傷つけてしまうこともある。
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ラベルと言えども言葉だもんね。正しく使わないとね。
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あとこれは当事者にありがちだけど、ラベルは確かに自分に肯定感を与えてくれる最初の一歩になるけど、全部の悩みを解決してくれるわけじゃない。期待しすぎるとガッカリすることにもなるよ。
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じゃあ、どうすればいいの?
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ラベルを材料に次の行動に出るしかない。例えば、自分がアセクシュアルだと思ったら、次は関連書籍を読んでみるとか、専門のウェブサイトを見るとか、コミュニティに参加してみるとか、それはいろいろだけどね。
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ラベルが多すぎて困るという人もいるんじゃない?
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そうだね。無数のラベルを一度に目にすると面食らうよね。でもあなたが分類されるのではない。あなた自身がラベルを自分の意思で利用するのであって、何もプレッシャーに感じる必要はないよ。
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「このラベル、いいかも。使ってみるか~」くらいの気持ちでいいよね。
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とりあえず総括するけど、「ラベル分けするのは良くない」という考えを持つのは別に構わない。でもラベルを利用している人がいたら、その人の意思を尊重してあげてほしい。相手のアイデンティティを尊重し合うのは健全な社会を作るうえで大切な基盤だからね。
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編集部コメント
アセクシュアルやアロマンティックといったラベルは何も強制的な区分でも分類でもありません。各個人が自分で考えてそのラベルを使うかどうかを決めます。ラベルの意義と注意点を考慮しつつ、その人の意思を尊重するようにしましょう。
類似質問ワード
「アセクシュアルやアロマンティックなどとラベリングするのは悪いこと?」
「アセクシュアルやアロマンティックなどとラベル分けする方が差別?」