アセクシュアルやアロマンティックはHSPと関係がありますか？

突然だけど「HSP」という言葉を聞いたことはある？

うん、日本でもある時期からこの言葉が流行するようになって一気に普及したのだけど、HSPというのは「Highly Sensitive Person」の略で、日本語では「環境感受性」とも呼ばれているよ。

私たちが何かしらの環境から影響を受けることは日常的だけど、その影響の受けやすさ（感受性）には、それぞれに個人差がある。中にはすごく影響を受けやすい人もいる。HSPというのは、この環境に対する感受性がとくに高い人たちを表すラベルのことだよ。

何でもありうるのだけど、例えば、音、光、温度、匂い、人の存在…。そんないろいろだね。

まあ、そういうことになるね。

もともと1990年代にアメリカの臨床心理学者エレイン・アーロンが自身の著書や論文で使用し始めた言葉だったのだけど、2018年頃にとある自己啓発本がメディアで紹介されて日本で話題となり、そこから一般に「HSP」という言葉が浸透したようだね。

一方でその「HSPムーブメント」の中、HSPに対する誤解も広まってしまい、問題にもなっているんだよ。

まず人には「HSPの人」と「HSPではない人」がいるという極端な分け方。これは誤りで、HSPか非HSPであるかを切り分ける明瞭な基準はないと専門家は指摘しているよ。

環境感受性には幅があるもので、それを細分化して分類はできない。でも世間では「○○型HSP」のような用語が乱造されたりもしているよ。

また、HSPを診断できると安易に謳った情報も蔓延しており、「HSP診断テスト」なるものがネット上にもあったりするけど、それも科学的根拠は全然ないよ。

それにHSPを「生きづらさ」を示すものだと勘違いしている人も多い。でも環境への影響の受けやすさは、プラスの面もあればマイナスの面もあるので、単純に生きづらいわけじゃない。

もしかしたら自分の繊細さに後ろめたさを持っていた人が、「これはHSPなんだ」と新しい用語で上書きすることでポジティブに解釈し直せるようになった…その体験が人々を熱中させるのかもしれないね。もちろんそれ自体は悪いことじゃない。でも用語を本来の意味から逸脱せず、正しく使うことは大事だよ。

残念ながら世の中にはHSPを悪用する人もでてきている。「HSPは治せる」「HSPを診断します」「HSPをカウンセリングします」…そう根拠なく掲げて、HSPだと思っている人を誘い込むクリニックやイベントもある。これは「HSP医療ビジネス」と呼ばれる類のもので、とても怪しく信頼できないので注意がいるよ。

うん、HSPは誰しもが持つ環境感受性のことだから、何か異常なわけではない。

このHSPに関して、アセクシュアルやアロマンティックと関係があるという情報も一部で囁かれたりしているけど、全くそのような根拠はないので、説明しておくね。

おそらく環境から影響を受けやすいから、その人はアセクシュアルやアロマンティックなんじゃないか…と安易に結び付けているのだと思うけど。

うん。少なくともそういうことを裏付ける科学的証拠はないよ。さっきも言ったように、​HSPは良い環境と悪い環境から良くも悪くも影響を受けやすいわけだから、それは他者への性的魅力や恋愛的魅力の感じ方にも多様な影響をもたらすだろうし、魅力の消失に繋がると一面的に決めつけることはできない。

当然、アセクシュアルやアロマンティックの人の中に「私はHSPです」と言う人がいるのは何も変ではないよ。ただ、それを安直に関係性があるかのように語るのはそれこそ誤解に繋がるのでやめたほうがいいね。

アセクシュアルやアロマンティックの人も「HSP」という言葉を適切に理解しておこうね。