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新しい邦訳書籍『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』が発売開始。アセクシュアルを多角的に分析するエッセイ

新しいアセクシュアル邦訳書籍『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』が発売開始

アセクシュアル・アロマンティックに関する日本語で読める書籍はまだまだとても少ないです。そういう本がもっとあればいいのに…と思っている人もいるのではないでしょうか。2023年5月、新しい邦訳書籍が発売になりました。

それがアンジェラ・チェンを著者とする『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』(訳者:羽生有希)です。

どんな内容の本?

『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』は「Ace: What Asexuality Reveals About Desire, Society, and the Meaning of Sex」という原題で2020年9月に英語で初版発行された本です。

タイトルのとおり、アセクシュアル(アセクシャル)について書かれている、アセクシュアル・スペクトラムを主題にした専門書となります。タイトルの「ACE(エース)」とは、アセクシュアル当事者が用いる自分たち当事者を示す言葉です。

アセクシュアルに関する初歩的な解説書というよりは、著書の視点から、社会のさまざまなテーマをアセクシュアルの視点で切り込んでいくエッセイとなっています。その範囲は、フェミニズム、ジェンダー、宗教、人種、障害など多岐にわたり、インターセクショナリティな語り口が特徴です。LGBTQのテーマでも見落とされがちなアセクシュアルの語りによって、既存の題材を新しく切り開いていっています。

書籍の目次は以下のとおりです。

著者によるはしがき

Part 1 自己
 プロローグ 
 第1章 アセクシュアリティにたどり着いて 
 第2章 〈否定を通して〉説明する 
 第3章 強制的性愛と(男性の)アセクシュアル存在 

Part 2 変奏
 第4章 お前を解放させてくれよ 
 第5章 ホワイトウォッシュされて 
 第6章 病めるときも健やかなるときも 190

Part 3 他者
 第7章 恋愛再考 
 第8章 十分もっともな理由 
 第9章 他者と遊ぶ、他者で遊ぶ 
 第10章 アナ
 第11章 どこへ向かっているのか、どこまで来たのか 

ありがとう 

原註
索引 
さらに読みたい人のために

引用:左右社

著者はどんな人?

『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』の著者は、アンジェラ・チェン(Angela Chen)というジャーナリスト・ライター。『ウォール・ストリート・ジャーナル』『アトランティック』『ガーディアン』『パリ・レビュー』『ナショナル・ジオグラフィック』などで執筆するほか、アセクシュアリティをテーマに講演を行っています。

アンジェラ・チェン自身はアセクシュアル当事者であり、アジア系というマイノリティの側面を持ち合わせています。

The Common」のインタビューでは「アセクシュアル(無性愛)であることで、物事がより明確に見えるようになると思います。関係性の評価に有用で、規範に疑問を抱くのに役立ちます。無性愛は多くのことをもたらします」と語っており、これまで無かったことにされてきたアセクシュアルの視点が世の中に与える価値を熱心に語る姿が印象的です。

どんな人にオススメ?

『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』は幅広い人にオススメできる本です。

日本では『見えない性的指向 アセクシュアルのすべて―誰にも性的魅力を感じない私たちについて』(著者:ジュリー・ソンドラ・デッカー)という邦訳本も2019年に発売されており、この『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』はそれに積み重なる本格的なアセクシュアル専門書となります。

『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』は、アセクシュアルについて学びたい人はもちろん、フェミニズムやジェンダーなど多彩な視点と絡めて学ぶこともできるので、非常にアカデミックかつ多様な発見があるのでしょう。

小さい子どもには少し難しいのであまりオススメできませんが、邦訳として丁寧に翻訳されていることもあって、10代や大人の読者層にとっては読みやすさはじゅうぶんです。普段からフェミニズムやジェンダー、LGBTQ関連の本を読んでいる人ならば簡単に読めます。『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』を読んだ後に、他のフェミニズムやジェンダー関連の本を読んでみるのも、繋がりを感じられて視野が広がるでしょう。

完全な初心者向けの入門書ではありませんが、この「AセクAロマ部」で簡単にアセクシュアル関連の用語の意味などを頭に入れておくと、本もサクサクと読めるのではないかと思います。

とは言え、『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』は学習に最適ですが、これを読んだからといってアセクシュアル当事者にあれこれと質問するのはやめましょう。多くのアセクシュアル当事者は、たとえ純粋な好奇心であろうとも奇異の目で見られるのを嬉しいとは思いません。当事者の尊厳を何よりも大切にしてください。


『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』は「左右社」から2023年5月19日に刊行され、価格は2750円(税込み)。ページ数は448ページで、ISBNは「978-4-86528-366-2」。購入したいかたは、お近くの書店、またはインターネット・ショッピングでどうぞ。