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LGBTQ関連書籍を検閲して禁書にする動きが活発化するアメリカ。アセクシュアルの本も禁止に…

アセクシュアルの本も禁書に。

アセクシュアル(アセクシャル)アロマンティックを含めたLGBTQ関連の本が図書館から消えてしまう…そんな事態が今、アメリカで起きています。一体なぜそんなことになってしまったのでしょうか。

LGBTQ関連書籍が禁書になっている

「図書館」というのは、本がたくさん保管され、閲覧できる施設です。誰でも自由に入ることが可能で、無料で本を読むことができます。公共図書館サービスは大衆にとって「情報を学び、知る場所」として現在も欠かせない役割を担っています。

こうした図書館を脅かすのが「検閲」そして「禁書」です。

「検閲」というのは政府や警察などの権力者が介入し、何を良しとするかを勝手に決め、特定の内容を排除してしまう行為です。本が検閲されてしまうと、「この本はダメ」と一部が排除されることになり、図書館にも置けなくなってしまいます。こうして検閲されて排除された本を「禁書」と言います。

本の検閲や禁書は昔から問題視されてきました。主に、宗教的にタブーであったり、政治的に不都合があったり、わいせつな内容の本が、検閲の対象になることが多いです。

しかし、近年、LGBTQ(セクシュアル・マイノリティ)の本がその検閲に狙われています。

「表現の自由」を守るために活動する非営利組織である「PEN America(ペンアメリカ)」によれば、2022年6月までの1年間にアメリカでは1648冊が禁書として規制され、とくに規制された書籍のおよそ4割はLGBTQをテーマに扱っているものだったとのこと。

また、そうした禁書となった本の中には『How to Be Ace: A Memoir of Growing Up Asexual』のようにアセクシュアルの本も混ざっていました。

「PEN America」は2022年を「恐ろしい1年」と振り返っており、状況は悪化し続けていることを報告してもいます。

背景にあるのは宗教右派&保守層

どうしてこのような事態になってしまっているのか。

LGBTQの本を検閲して禁書にしようと働きかけているのは、主に宗教右派や保守層の人たちです。

これらの動きは今に始まったことではなく、昔からみられました。宗教右派や保守層の人たちはLGBTQのようなセクシュアル・マイノリティを「不健全でいかがわしいもの」と見なしています。子どもに見せるものではないと考え、それゆえに子どもがよく利用する図書館から、こうしたLGBTQの本を排除しようとしてきたのです。

しかし、近年はその動きはさらに激しさを増しています。

背景にあるのはLGBTQの運動が活発化したことです。子どもたちの中にも自分がLGBTQであることをカミングアウトする子も普通に見られる時代です。アメリカの世論調査大手「Gallup」の2022年の公表調査によれば、異性愛者以外のマイノリティな性的指向や性自認を自覚しているアメリカの成人の割合は、過去10年間で2012年の3.5%から7.1%に倍増しており、近い将来10%を超えると分析しています。とくに若い世代のLGBTQの割合は高く、いわゆるZ世代と呼ばれる人たちの場合は5人に1人以上、具体的には21%が何かしらのセクシュアル・マイノリティであると認識していることが調査から明らかになっています。

このようにLGBTQが当たり前に受け入れられつつある中、宗教右派や保守層の人たちはその流れに焦り、反発を強めているのです。そのため図書館からLGBTQの本を排除しようと躍起になっています。

アメリカでは禁書だけでなく、LGBTQについて学校で教えることも禁じようという動きが各州で観察でき、抑圧が激しくなっています。

日本も他人事ではない

こうした話題は何もアメリカだけで起きている話ではありません。日本も対岸の火事ではいられないでしょう。

日本でも宗教右派や保守層の人たちはLGBTQに否定的な態度をとっています。最近も自民党の「神道政治連盟国会議員懇談会」の会合でセクシュアル・マイノリティに対して差別的な言論が出回っていることが問題視されました。差別的な発言をする政治家も各地で後を絶ちません。

日本国内においても政治が図書館に直接的もしくは間接的に介入しようとする動きもゼロではなく、LGBTQの本をターゲットにすることもいつ起きてもおかしくありません。

現状、日本では出版されているLGBTQ関連の書籍はアメリカと比べると数が少ないです。あまり目立っていないのでこうした日本の宗教右派や保守層の人たちも関心を持っていないのかもしれません。

しかし、今後、日本でもLGBTQ関連の書籍が充実してくれば状況は悪化することもあり得ます。

アセクシュアルやアロマンティックを含めたLGBTQ関連の本がよりたくさんの子どもたちに読まれ、悩みや不安を解消する一助となるように、本を読む自由を守っていける未来を創ることが望まれています。