アセクシュアルやアロマンティックは失恋が原因でそうなるのですか？

ああ、それね…。よくありがちな誤解のひとつだね…。

確かに恋愛をしていれば失恋を経験することはじゅうぶんにあると思う。いろいろな失恋のかたちがあるだろうけど。

そんな失恋がものすごく大きなショックとなり、しばらく食欲も失せるとか、感情が沈むとか、さまざまな影響がでることもあるのは当然です。

人によっては失恋をしたことで、恋愛に対する自信が無くなり、「恋愛をしようという気持ちが消えてしまったな」という人もいるでしょう。「しばらく恋愛はいいかな…」と遠ざかることも珍しくないはずです。

ただ、ここで強調しておかないといけないのは、そういう「恋愛に対する一時的な気持ちの萎縮・消極化」と「アセクシュアル・アロマンティック」というのは全く別物だということだね。

「恋愛に対する一時的な気持ちの萎縮・消極化」というのはモチベーションの問題だから時間や環境によって回復することがあると思う。場合によっては人の助けが必要になるかもだけどね。

対する「アセクシュアル」や「アロマンティック」は性的指向や恋愛的指向であり、それはその当事者にとって明確な平常です。決して一時的に気持ちが沈んでそうなったわけではないよ。

まあ、そんな整理をすることもできるかもね。

ただ、アロマンティックの人にもいろいろな背景はある。例えば、以前はなんとなくな流れで他人と恋愛関係を持っていたけど、後々になって「自分はアロマンティックだ」と気づいたとか。そういう場合は失恋を経験したことがあるアロマンティックの人だっていると思うよ。

それにアセクシュアルの人の中には他者に恋愛的に惹かれる人もいるし、アセクシュアルとアロマンティックの言葉の混同による誤解などは注意がいるね。

もちろんアロマンティックの人だって他人と恋愛関係は持たなくても、他の形で関係を持つことはあるし、その関係が崩れて気持ちが沈むことはあると思う。そこについては変わらないよ。

とにかく言いたいのは、失恋などの恋愛の失敗がトリガーになってアロマンティックになる…というわけではないということ。

アロマンティックの当事者の中には、このような「失恋が原因だ」という誤解のせいで嫌な思いをしてきた人は少なくない。

その誤解は「また恋愛をしたくなるはず」「勇気を持って恋をしてみれば？」という身勝手な応援の押し付けに繋がり、アロマンティックの人を傷つけるよ。

また、失恋をして気持ちが沈んでいる人に対して「アロマンティックだね」などと言ってアロマンティックを身勝手に無理やり結びつけようとするのもよくないよ。

実際のところ「アロマンティック」という言葉は失恋に傷ついた心を慰める効果を意図してデザインされたものではないし、失恋した人にとっても大きなプラスの利益はないだろうし…。

「アロマンティック」という言葉がカジュアルに「恋愛をする気分じゃないこと」という意味で誤って広まったりしないように、メディアなどは責任をもって正しく用語を使用したり、説明する必要があると思う。

うん、傷ついて損をするのはいつも当事者だからね。言葉の使い方には慎重になろう。