- Q日本でも行われている同性婚(同性結婚)の制度化を求める運動は、アセクシュアル(アセクシャル)には関係がないことですか?
- A
いいえ。アセクシュアルには関係がないとは言えません。アセクシュアルやアロマンティックの人の中にも同性婚を望んでいる人はいます。
同性婚はアセクシュアルには無関係?
日本でも同性婚の法律上での実現を求める動きが活発になってきているね。「結婚の平等」と呼ばれたりもするけど。
「パートナーシップ制度」というのを聞いたことがあるけど、あれで同性同士でも結婚できるんじゃないの?
パートナーシップ制度は国が法律で認める「結婚」とは全く違うものなので、同性同士で結婚できるようになるわけではないよ。
同性のパートナーと結婚したい人にとっては大事な問題だよね。でも、アセクシュアルの人はあんまり関心がなさそうだよね。
いや、アセクシュアルにとっても同性婚の制度化はとても大切なことだよ。
なんで? 同性愛者の人たちだけの関心事なのかなと思ったけど。
それは違うんだ。整理するとまず世の中には大雑把に分けると3種類の人がいる。異性と結婚したいと望む人。同性と結婚したいと望む人。誰とも結婚したくないと望む人。
うんうん。
で、ここからが大事だけど、この3つは性的指向で分類されているわけではない。例えば、異性と結婚したいと望む人の中には、当然、異性愛者が多い。でもバイセクシュアルやパンセクシュアルのような人もいるし、さらにはアセクシュアルの人だっているんだ。
あ~、そういうことね。アセクシュアルでもパートナーを持つ人はいるもんね。
同様に、同性と結婚したいと望む人の中には、同性愛者だけでなく、バイセクシュアルやパンセクシュアルのような人もいるし、さらにはアセクシュアルの人だっている。もしかしたら異性愛者だけど同性と結婚を望む人もいるかもね。
誰とも結婚したくない人は?
「誰とも結婚したくない人=アセクシュアル」ではない。誰とも結婚したくないと思っている異性愛者や同性愛者、バイセクシュアルやパンセクシュアルのような人もいる。
実際は3つの中にいろいろな性的指向の人がいるということだね。
でも法律では「異性と結婚する自由」は認められて、「誰とも結婚しない自由」も認められているけど、「同性と結婚する自由」だけが認められていない。だから不平等で問題なんだよね。
「同性婚の支持=結婚制度の支持」ではない
同性と結婚できなくても、一緒に暮らしているだけではダメなのかな?
同性婚できないと当事者には実はかなり多くの困った問題が起きるんだよ。
例えば?
相続できず、家を追い出されることもある。同じ国で暮らせないこともある。パートナーが病気や怪我で入院してもそばにいてあげられない。子どもを育てても親権者になれずに赤の他人扱いになってしまう。他にもいろいろだよ。
そんなにいっぱいるのか…。
こうした「同性と結婚したいのにできない人」が直面する不利なことは、「異性と結婚したいと望む人」や「誰とも結婚したくない・パートナーも欲しくないと望む人」が経験しないことだから、やっぱり不公平だよね。
でも…少し考えてしまうのは、同性婚を認めると「結婚をすることを良しとする」という風潮を強めてしまわないのかなって…。
うん、それについて不安に感じる人がいるのもわかる。でも同性婚の制度化を求める人たちは何も「全員が結婚しろ!」なんて強要はしていない。「結婚の自由」を求めている。これには当然「結婚をしない自由」も含まれている。
誰と結婚してもいいし、結婚しなくてもいいってことだね。
だから、同性婚の制度化を支持することは、恋愛伴侶規範を支持することと同じではないと思うよ。
自由を求めているんだもんね。
むしろ同性婚に否定的な社会というのは、「人は男女で結婚して家庭を持ち、子どもを産むべきだ」という規範を押し付けようとしていることが多い。これは「誰とも結婚したくない・パートナーも欲しくないと望む人」にも嫌な社会だよね。
同性婚の制度化が実現すれば、そんな社会の異性愛を前提にした恋愛伴侶規範を壊せるきっかけになるかもね。
結婚制度自体に反対な人でも、同性婚を支持している人はいる。それは結婚制度がそもそも異性愛規範で成り立っていることをよく理解しているからだね。
当事者意識を持つこと
じゃあ、アセクシュアルの人でも同性婚の制度化を支持するのは別に変でも何でもないんだね。むしろ関係があることなんだ。
中にはそれでも「自分は同性と結婚したいアセクシュアルではないから関係ない」と無関心でいる人もいると思う。それはそれでその人の考えだから尊重はする。でもそう言い切れてしまうことはマジョリティな特権かもしれないと自覚的になってみるのもいいのではないかな。
困っている他者を助け合うことこそ、まさに連帯だよね。
日本では特定の性的指向が違法というわけではない。社会で存在することはできる。でも厄介なことに、その性的指向に付随してくる「本人が望む行動」が規制されたり、タブー視されたりすることがあり、それによって特定の性的指向が表面化するという現実がある。
今回の場合は、その「本人が望む行動」というのは「結婚」だね。
うん。だから現状は差別を受けることによって性的指向が表面化しているんだ。結婚はその表面化が最も起きやすいシチュエーションのひとつだね。
ほんとはそういうのを気にせずに、結婚したい人はして、したくない人はしないということが普通にできればいいんだけど。
今回は、異性と結婚したいと望む人、同性と結婚したいと望む人、誰とも結婚したくないと望む人…の3パターンに大雑把に分類したけど、実際はもっと複雑だよ。ノンバイナリーの人もいるし、ポリアモリーの人もいる。そういう人たちのことを考えると結婚をめぐる不平等はまだまだ多い。
そっか、他にもマイノリティはいるよね。
同性婚の制度化が実現したら全てがオール・ハッピーで解決とはいかないのはわかっている。でもまずは一歩を踏み出したいよね。
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編集部コメント
アセクシュアルやアロマンティックの人でも同性婚を望んでいる人はいます。同性結婚をめぐる議論はさまざまな性的指向や恋愛的指向に関わることですので、「結婚の自由」や「結婚の平等」について多くの人が当事者意識を持って考えるべきことでしょう。
▼参考ウェブサイト
・結婚の自由をすべての人に – Marriage for All Japan –