- Qサピオセクシュアル(サピオセクシャル / Sapiosexual)とは何ですか?
- A
他者の知性に性的魅力を感じるということです。性的指向のひとつと扱われることもあれば、性的指向とみなされないこともあります。
知性に魅力を感じる?
誰かに性的魅力を感じるとき、どこに着目しているかな?
やっぱり身体かな? セクシーなボディってやつでは?
定番ではあるね。身体以外だと、ファッションとか、はたまた声とか、そういう要素にも性的魅力を感じる人はいるよね。
ああ、うん。そういうこともあるよね。
今回は「知性」に性的魅力を感じる人のことを説明するよ。
知性? 頭がいいってこと? でも賢い人の方がモテるうえではプラスになるでしょ? マイナスになることはないよね?
そうだね、ひとつひとつ解説していこう。まずこの知性に性的魅力を感じる人を「サピオセクシュアル(サピオセクシャル)」という性的指向としてラベルを与えることがあるんだ。
それも性的指向として名前があるんですね。
英語では「Sapiosexual」と書く。「sapio」というのはラテン語で「賢い」とかそういう意味だね。ちなみにヒトの学名は「ホモ・サピエンス」なのだけど、この「サピエンス」も「sapio」からきている言葉で「賢い者」という意味になるよ。
そうやって背景を知ると覚えやすいかも。
サピオセクシュアルの人は、知性を最重要視する。その人のジェンダーとか容姿よりもね。性的魅力を考えるうえで知性を最優先で位置づける人だとも言えるね。
そっか、だから「賢い人はみんな好きでしょ?」というのとは違うんだね。
そう。なのでサピオセクシュアルの人の中には魅力を感じた人と、知的な活動…例えば学問について語り合ったりとか、そういう行為を何よりも楽しみたいと思う人もいるよ。
いつからこの言葉はあるの?
2014年くらいにインターネット界隈で定着し始めたようだね。
性的魅力ではなく恋愛的魅力を知性に感じるときは?
「サピオロマンティック」という恋愛的指向と考えることができるね。意味としては基本は一緒で、ジェンダーや容姿外見よりも知性を恋愛的魅力を感じるうえでの最優先事項にする人のことですね。当然、サピオセクシュアルかつサピオロマンティックな人もいるよ。
サピオセクシュアルをめぐる論争
でもこの「サピオセクシュアル」という用語に関しては論争もあって、それはこの言葉を使用するうえでも理解しておきたい部分なのだけど…。
論争? 何があったの?
まずサピオセクシュアルをとくに考えなしに平然と「LGBTQ」というマイノリティの輪に含めることもあるんだけど、それはダメなんじゃないかという指摘があるんだ。
なぜ?
サピオセクシュアルというのは知性への魅力を重視するということだから、それだけでは何かしらの差別や偏見を受けているわけではない。マイノリティ性は無いではないかという批判だね。
確かに。それだとマジョリティな人も簡単に「サピオセクシュアル」としてマイノリティっぽい雰囲気を出せてしまうことになるのか…。
あともうひとつの大きな論点は、サピオセクシュアルという考え自体がそもそも差別的ではないかという批判だ。
それはまたなんで?
知性に魅力を感じるというのは、一歩間違えれば「学歴主義」であったり、「障がい者差別」であったり、そういう知性が劣るとされる人を排除する思想に繋がりかねない…ということだね。
なるほど。そういう側面もありうるのか…。
実際に「知性が劣る」と判断された人々が差別を受けたり、場合によっては虐殺されたり、そういう暗い歴史があるからね。それは軽視できない。
う~ん、魅力を感じないにしても否定したり、人権を奪うのは論外だよね…。
もちろんサピオセクシュアルの人が全員そういう考えの持ち主であると言いたいわけではないけどね。最近はそういうサピオセクシュアルの問題点を意識して「Scisexual」や「Cognisexual」という代替用語に置き換える動きもあるよ。これらはどちらかと言えば学問や科学の知識に重点を置いていることが強調されているね。差別を助長する意図で使うことはできない用語になっているよ。
加害者になりうるリスクについて常に学ぼう
となるとサピオセクシュアルって言葉は使わないほうがいいのかな?
用語をどうするかは別にしても、サピオセクシュアルという概念そのものを否定する必要はないと思う。要するに扱い方しだいじゃないかな。実際、他者と学問的なトークをする時間が何よりも魅力に感じる人はいるわけでしょ?
まあね。
それに自分が何に魅力を感じるのかを考えるのは決して無駄ではないよ。自分の性的指向や恋愛的指向を理解する助けになると思う。
私は知性が一番に好き…っていうのも変ではないよね。
アセクシュアルやアロマンティックのような「Aスペクトラム」の人にとってもサピオセクシュアルは無縁ではない。
というと?
アセクシュアルだけどサピオロマンティック…という人もいるし、デミセクシュアルとサピオセクシュアルが混ざった人もいる。性的魅力や恋愛的魅力ではないけど、知性に対する魅力は共感できる…という人もいるだろうね。
複合的にサピオセクシュアルがカチっとハマる人もいるわけだね。
サピオセクシュアルは確かに差別的思想を刺激しかねないリスクはあるのだけど、ただ言っておきたいのはマイノリティなラベルはみんなそういうリスクを大なり小なり抱えているということだ。
みんな?
うん。例えばゲイの人はトランスジェンダーを差別してきた歴史があるし、レズビアンの人の中にはバイセクシュアルへの偏見が根強いという事実もある。トランスジェンダーの人がノンバイナリーを否定したりもしたことだってある。また、アセクシュアルだからといってセックスワーカーへの差別は許されない。
マイノリティであろうとなかろうと「差別する側」には簡単になれてしまうもんね。
だからサピオセクシュアルの論争は私たちに「誰もが加害者になりうる」危険性というものをあらためて教えてくれるものでもあったね。
そういう差別問題について学ぶという知性はサピオセクシュアルでなくても大事にしていきたいですね。
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編集部コメント
サピオセクシュアルという用語を使う場合は、当事者であれ非当事者であれ、知性に関する差別を助長することがないように細心の注意を払いましょう。また、安易に「LGBTQ」の中に並べるのは論争を引き起こすことがあるという点も理解しておきましょう。