アセクシュアルやアロマンティックであることを証明しろと言われたらどうすればいいのですか？

アセクシュアルやアロマンティックであることを、友人や家族、職場でカミングアウトしている人もいると思うけど…。

うん。もちろんカミングアウトは絶対にしないといけないものではないから、別にカミングアウトしていなくても恥に思う必要はないけどね。

ただ、素直に受け入れてくれるならいいけど、カミングアウトしたらしたで面倒な反応をされてしまうことも少なくない。

よくありがちなことのひとつに「アセクシュアルやアロマンティックであることを証明してみろ」という反応がある。

要するには「アセクシュアルやアロマンティックである」という本人の言葉だけではどうにも信用できない・納得できないので、何かしらの方法でそれが事実だと証明してくれ…ということだね。

そんな厳しい言葉で「証明しろ！」「証拠はあるのか！」と言ってくるわけではないかもしれない。「そうと決めるのは早いんじゃないの？ どうしてアセクシュアルやアロマンティックだと思ったの？」と一見すると優しい言葉で理由を尋ねてくる人もいるだろうね。

当事者にしてみればカミングアウトするだけでも大きな負担なのに、「証明する」という思わぬ要求がやってきて、さらに苦しい立場に追い込まれてしまうよね。

そうだね。まずは根本的な話になるけど、アセクシュアルやアロマンティックに限らず、あらゆる性的指向や恋愛的指向は客観的に証明できるようなものではないよ。

病気じゃないから病院で診断書をもらえるわけではないし、LGBTQの専門家であっても「あなたの性的指向はこれです」とお墨付きを与えてくれるわけではない。

その人がどうやって「自分の性的指向や恋愛的指向」を判断するにいたったのか。それは千差万別でとてもプライベートな領域だよ。それを他人がズカズカと入りこめはしないし、こちらに開示せよと要求もできない。

そもそも「証明する必要もない」ことなんだけどね。「証明しろ」と言われる筋合いもない。

確かにそう思ってしまう当事者もいるかもしれない。実際に「証明できないならアセクシュアルやアロマンティックではないということだ」と言い切る相手も中にはいると思う。

けれどもそういうことは相手にする価値はないと開き直っていいと思うよ。これはいわゆる「悪魔の証明」なのだから。

「悪魔の証明」というのは消極的事実の証明の困難性を表す用語だね。例えば「この世に悪魔はいる」ということを証明したいなら悪魔を実際に見つければいいけど、「この世に悪魔はいない」ということを証明したいなら何をすればいいのかも難しい。「探しても見つかりませんでした」と言っても「探し方が悪い」などといくらでもケチをつけられてしまうよね。

基本的に「“ない”こと」を証明するのは難しい。そしてアセクシュアルやアロマンティックというのは「性的魅力を感じない・恋愛的魅力を感じない」という「“ない”こと」を土台にするアイデンティティだから、他の性的指向や恋愛的指向と比べても悪魔の証明に陥りやすいんだよね。

だから証明ということに考え込んでしまう当事者もいると思うけど、気にする必要はないよ。

本人でも他者でもとにかく「尊重する」というのが大事だと思う。

まず誰かからアセクシュアルやアロマンティックだとカミングアウトされた場合。「どうして？」「なぜ？」という疑問は頭に浮かぶかもしれないけど、それはぐっと飲みこんでまずは相手を尊重しよう。「そうなんだね」と受け止める。その尊重が本人にとっても安心感に繋がるのだから。

そして自分がアセクシュアルやアロマンティックの当事者の場合。どうしても自分でも確証が欲しくなるときもあるよね。

だから「性嫌悪はあるか」とか「恋人は欲しいか」とか、そんなことをついつい考え込んでしまう。でも本来はそんなことも無理に考える必要はない。あなたが自分がアセクシュアルやアロマンティックだと思ったなら、その自分自身を尊重してあげよう。それだけでいいから。

うん。自分で自分を疑うことって実は無意識のうちにとても自分を傷つけることにもなりかねないからね。うっかり自分自身に証明の負荷をかけていないか、一度冷静になってみるのもいいかもね。