- Qジェンダー・アイデンティティ(性同一性、性自認)とは何ですか?
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自分自身の性別をどう自覚しているのかという自己認識を意味する科学用語です。これはある一定の体験の中で深まっていく個人の感覚です。「好きなように気分で自称できるもの」でもなければ、「そう思い込んでいる」わけでもないです。
ジェンダー・アイデンティティ? 性自認?

今回は「ジェンダー・アイデンティティ」について簡単に説明するよ。

ジェンダー・アイデンティティ…。

これは英語の「gender identity」をそのままカタカナで書いた言葉だね。日本語では「性同一性(せいどういつせい)」や「性自認(せいじにん)」と訳したりもするけど、どれも同じ意味だよ。今回は「ジェンダー・アイデンティティ」で統一するね。

ジェンダー・アイデンティティも、性同一性も、性自認も、同じ意味の言葉なんですね。なるほど。

そしてこれも最初に言っておくけど、ジェンダー・アイデンティティは何か特定の政治や社会の思想/主義に関する言葉ではないよ。ジェンダー・アイデンティティは科学用語であり、科学的に認識されている概念だよ。主に心理学・精神医学・性科学の領域分野で作られた専門用語だね。

科学の専門的な用語なんだ!

そう。ジェンダー・アイデンティティの研究の歴史は古くて、19世紀後半から20世紀初期から分析がされていて、言葉を作って広めたのは精神医学の学者であったロバート・ストーラーで、1963年の頃だと言われているよ。

ふ~ん、すごい昔から研究されているんだね。

現代でも、例えば、心理学会など学問のコミュニティでは当たり前に認知され、解説されている言葉だよ。

専門の研究者だったら普通に知っている言葉なんだね。

うん。だからちょっと概念として小難しくて、理解するのが大変なのも無理はないけど、ここではなるべく簡単に説明するね。
ジェンダー・アイデンティティがわかりにくい理由

では、ジェンダー・アイデンティティって何ですか?

ジェンダー・アイデンティティというのは、自分自身の性別をどう自覚しているのかという自己認識のことだね。

うん…う~ん?

この説明だとわからないよね。以前に「性的特徴」と「出生時に割り当てられる性別」について話したよね。


人間の性別に関する身体の特徴は思っている以上に複雑…っていう話だったよね。産まれたときに「あなたは男の子/女の子」と陰茎の有無で大雑把に判断するのが「出生時に割り当てられる性別」だったね。

そうだね。「出生時に割り当てられる性別」というのは一部の基準だけで他人が決めつけた性別なんだよね。それで、多くの人は「出生時に割り当てられる性別」に基づいて当面の間は生活していくわけだけど、自分の性的特徴はさておくとして、「自分の性別はこうである」という認識も自分の中で深まっていく。

「私は女だよな」とか、「私は男だ」みたいな自覚ってこと?

言いかたを変えると帰属意識だね。どの性別に帰属しているのか…そういう感覚。この帰属というのはまさにアイデンティティと呼ぶものだね。

だからジェンダー・アイデンティティっていうのかぁ…!

脳の発達にともない、早いと2~3歳頃からジェンダー・アイデンティティの意識が芽生え始めると言われているよ。つまり、ジェンダー・アイデンティティはたいていの人にあるということだね。

みんなにあるのかなぁ…。でも「ジェンダー・アイデンティティなんて考えたこともないぞ」っていう人もいるでしょ?

多くの人は感覚的にわかりづらいと思う。なぜならたいていの人はジェンダー・アイデンティティは「出生時に割り当てられる性別」と一致するからね。例えば、「あなたは男です」と産まれたときに他人に決められ、自分の中でも「私は男だよな」と自己認識が深まる。これならとくに意識しなくてもいいよね。

出生時に割り当てられる性別と同じだからね。

でも中にはジェンダー・アイデンティティが「出生時に割り当てられる性別」と一致しない人もいる。例えば、「あなたは男です」と産まれたときに他人に決められたけれども、自分の中では「私は女であると考えるほうがしっくりくる」と自己認識が深まることもある。

それだと出生時に割り当てられる性別と同じじゃないから…どうしても意識してしまうよね。

そうだね。こういうふうにジェンダー・アイデンティティが「出生時に割り当てられる性別」と一致する人を「シスジェンダー」、一致しない人を「トランスジェンダー」と呼んで分けることがあるよ。

ジェンダー・アイデンティティも「男性」と「女性」で主に考えるの?

ジェンダー・アイデンティティは「男性」と「女性」のほかに、男女の二元論で捉えない「ノンバイナリー」(Xジェンダー)などもあったり、多様だよ。

ジェンダー・アイデンティティが子どもの頃から認識できるものなの?

そうだと言われているけど、でも大人になってから「自分のジェンダー・アイデンティティはこうかも…」と認識する人もいるし、年齢はさまざまだよ。

ジェンダー・アイデンティティってどういう仕組みで認識できるんだろう?

それは科学的にもまだ完全に解明されてないんだよね。研究者の中には生物学的な要因があると分析している人もいるよ。
ジェンダー・アイデンティティの誤解

ジェンダー・アイデンティティって「心の性別」なの?

そういう言いかたをする人もいるし、そういう説明を全否定するつもりもないけど、「心の性別」という言いかたは誤解を招くことも多いから難しいね。

誤解?

ジェンダー・アイデンティティに対するよくある誤解としては、「好きなように気分で性別を自称できる」とか、「その性別だと思い込んでいる」というものがあるね。もちろんどれも間違っているよ。

例えば、ずっと男性として生きてきた人が、あるとき、急に周りに注目してもらうために「私は女だ!」と主張し始めたら、それはジェンダー・アイデンティティではない…ってこと?

まあ、そうだね。当然、演技や笑いのネタとして、または“なりすまし”として、別の性別になりきることも、ジェンダー・アイデンティティとは全く違うね。

ジェンダー・アイデンティティが「出生時に割り当てられる性別」とは異なるのは、病気ということなの?

いいや、病気ではないよ。でも昔は精神疾患として扱われたこともあったんだよね。以前は社会の規範から逸脱するものを片っ端から精神疾患としてみなすような風潮があったんだ。偏見でしかないんだけどね。けれども現在はそれを改めているよ。

そういう歴史があるのは悲しいね…

ジェンダー・アイデンティティについては、今も誤解や偏見がつきまといやすく、それが差別を生んだりもする。だから言葉に気をつけていきたいね。
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編集部コメント
一部の反科学やトランスジェンダー差別の立場に立つ人は「ジェンダー・アイデンティティ(性同一性/性自認)」の概念を「思想にすぎない」と否定していますが、ジェンダー・アイデンティティが存在していることは間違いなく科学的なコンセンサスがあります。ジェンダー・アイデンティティを「心の性別」と表現する事例が散見されますが、原則的にそうした表現は不適切で不正確とされています。誤解を招くので基本は「心は女性」「心は男性」などという表現の扱いには慎重になるべきです。
類似質問ワード
「性自認とは?」「性同一性とは?」「ジェンダーアイデンティティとは?」
#ジェンダーアイデンティティ
