アセクシュアル（アセクシャル）の男性は存在しないのですか？ なぜ少ないのですか？

はいはい、それもよくある主張だね。

もちろんそうだよ。アセクシュアルの男性はちゃんと実在するよ。

アセクシュアルは性的指向のひとつであって、性的指向はみんな人それぞれ違うものだから、男性もそれぞれ個人で性的指向は違うよね。

それにもかかわらず「アセクシュアルの男性はいない」という主張がでてくる理由には、「男性は性的なことにみんな関心があるはずだ」という思い込みがあるから…というのが大きいのだろうね。

そう、まさにそういう考えだね。

うん。でも全ての男性がそうだというのは言い過ぎ…もっと言えば偏見だよね。

残念ながらこれは男性によくみられるジェンダーのステレオタイプだね。

要するに「男は女よりも体力がある」とか、「男は女よりも泣かない」とか、「男は女よりも運転が上手い」とか…いろいろあるけど。

どれも思い込みによるものばかりで、性別に基づく勝手な決めつけであることがほとんどだよ。

これは男性なら経験がある人は多いと思うけど、思春期を迎え始めると、「性」に関する話題を同世代とすることは増えやすいけど、男性の場合は、それは「エロ」…つまりアダルトなコンテンツや性行為に関する話になりやすい。

その同世代との話題の中では、当然のように「みんな性的なことに関心がある」という前提があり、「興味がない」と言えば、「真面目ぶっている」とか、そう言われてバカにされたり、仲間外れにされることもある。

だから男性の中には性的なことにそれほど興味がないのに「興味がある」というふりで話に付き合っている…という人も少なくないよ。

これは思春期の友達間だけでなく、いろいろな男性たちの場で起きやすい現象だね。

実はいくつかの調査では「男性のアセクシュアルの割合は女性よりも少ない」という結果もでているんだよね。

でもこれもそのまま安易にそう認識してはいけないのかもしれないよ。

さっきも説明したけど、男性は「男ならみんな性的なことに関心があるはずだ」という決めつけの中で生きていて、それが自分自身の性に関するアイデンティティの認識を妨げることもあるからね。

つまり、自分がアセクシュアルだと認識しづらいのかもしれない…ってこと。

あくまで可能性だけどね。こういう性的指向の割合を調べる調査は、正確な実態を解き明かすのが難しいんだよね。偏見が邪魔をすることがあるから。

とにかく世の中に出回っている調査の結果を過度に重視しすぎないことが大事だと思うよ。「アセクシュアルの男性は少ない」と吹聴すればするほど、世の男性は自分はアセクシュアルだと認識しづらくなるかもしれないし…